第24話 許せない…壊してやる…。


<愛理side>



気に入らない、気に入らない…ッ!

アンタは私のオモチャなんだよ?

清水亜美を追い出した様に、この女も追い出すの!


裏切り者は…消えれば良い。




「宍戸くん、ちょっと良いかな?」

『え、あ…ああ』



木陰に宍戸を呼び出して、メイク道具を取り出す。

これでアンタも終わりだね。

疑われて、傷付いて、落ちて行けば良い。

あの女に何を吹き込まれたのかわからないけど、私を裏切ったアンタが悪い。


私を敵に回した…アンタが悪い――



「ねえ、この傷で…私が何をしたいか、わかる?」

『傷?お前さっきまで傷なんか…』

「私が自分で殴って付いた傷…痛々しいでしょ?」



嘘、全てメイクで作った傷。

自分の大切な体に傷なんて作るわけないじゃない。



『なんでそんな事…』

「なんで…?アンタが裏切ったからじゃない」

『お前…本当に…愛理、なのか?』

「何、その質問。私は私」



自分の物じゃなくなったオモチャには興味ない。

私の思い通りにならないのならば、捨てるだけ。


もうアンタは…不要なの。



「おとなしく私の味方をしてれば良かったのに、馬鹿な男」

『それが…お前の本性かよ…。今まで俺達を騙してたんだな』

「騙す?変な事言わないで。アンタ達が勝手に信じ込んでるだけ」

『テメェ…』

「アンタも清水亜美のように、死ねば?

っざけんなよ!!



――ドンッ!



宍戸は私を木に押し付ける。

流石に女の私を殴るなんて出来ないもんね?

それがアンタの精一杯の抵抗。

でもそれだけで十分。


私のシナリオ通り過ぎて、笑っちゃう。



やだっ!やめて…!!

『は?』



さあ、出ておいで。

そしてコイツを苦しめてあげてよ、侑士。



『…お前も…そうゆうヤツやったんやな…』

『忍、足…』



侑士は元々呼んでおいたの。

"宍戸くんに何があったか聞いてくるから、侑士はここで見守ってて"ってね。

メイクはちゃんと木に隠れてしたし、この距離だと私が何を言っていたのかもわからない。


今侑士の目にアンタは…どうゆう風に写ってると思う?



『違えよ、俺は…!』

『手、離せや』



侑士は宍戸と私の間に入って宍戸を睨む。

良いね、大好き。

いつだって侑士は私の味方だもんね?



「侑、士…」

『愛理、その顔…』

『俺じゃねえ…俺はやってねえよ!』

『この状況でようそんな事が言えるな』

「怖かっ…た」

『大丈夫や、俺がついとる』



そうやって私が涙を流せば侑士はイチコロ。

全て作戦通り。

まだこの状況をよく理解していないようね、宍戸くん?

アンタはもう…私達の敵なの。



『見損なったわ、宍戸。お前はもう…仲間ちゃう

『忍足…』

俺の名前を呼ぶな



侑士は宍戸にそう言葉を投げ捨てると、私の背中に手を回した。



『行くで、愛理』

「…うん…ッ…」



可笑しい、可笑しすぎて笑みが零れてしまいそう。

ここまで思い通りに行くなんて…――











『10分間休憩』



今の声は幸村くん?

やっと会えた。

随分探したんだよ?



「幸村くん、あの…」

『君は…』

「小南愛理です」

『フフッ、どうしたんだい?愛理ちゃん



嬉しい、愛理って呼んでくれた。

貴方もこれからは私の仲間だよね?



「コレ、昨日キッチン使ってケーキ作ったんです」

『…くれるの?』

「はい、部活の後にでもどうぞ」

『ありがとう』



幸村くんは私のケーキを受け取ってふわりと笑う。

ああ、やっぱり私のモノにしたい。

その綺麗な顔を…私だけのモノに…。



『精……、幸村くん、ちょっと良いかしら?』

『優衣子ちゃん』



姫島優衣子…、

ウザイ…ウザイウザイ!

私の幸村くんに手出すなって言ったのに…!



『ごめんね、呼ばれてるみたいだから。コレ、ありがとう』



嫌、行かないで…。

貴方は姫島優衣子を選ぶって言うの?

私より…姫島優衣子を…。



『……フッ』

「……!!」



笑った…?この私を?

姫島優衣子…。

許さない…壊してやる…。


一生立ち直れないくらいに…アンタを…――









…ッ、跡部くん!侑士!



私はビリビリに破られたユニフォームとスカートを着用して、上からジャージを羽織った状態で二人の元に駆け寄る。



『愛理…どうしたんだ?その格好…』

『何をされたんや…?』

「姫島さんに呼ばれて…行ったら男の人が…ッ」

『一人で行ったんか?』

「だって一人で来いって言われたから…」

『ヤラれた…のか?』

「ううんっ、隙を見て逃げてきたの!でも…追いかけられて…必死で、逃げ…」

『もうええ、喋んな』

「…ッ…っく…怖、かったよ〜…」



完璧な演技。

自分でも驚いちゃうくらいにね。








『許せねえな、あの女』

『人間のやる事ちゃうわ』

『どうすんだよ、忍足』

『聞くまでもない。わかってるんやろ?』

『ああ…やられたら、やり返す』

『アイツも、愛理の痛みを味わえば良いんや――』



お姫様の悲劇に、王子様達がお怒りみたいだよ?

何されても仕方ないよね。

精々頑張って。


私を嘲笑った罪は…重いんだよ――?

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