不良少女







『ごめんなさい…ごめんなさい…』


『目障りなんだよ』


『お前がそんな奴だったとはな』


『最低』


『テニス部のクズ』


いやぁぁあああっ――!!


















(STAGE.01 -不良少女-)








北川明奈!覚悟しろや、ゴルァ!!

殴れるモンなら殴ってみろよ!



北川明奈、17歳。昨日、高校三年生になりました。

そんなピチピチの女子高生は…荒れに荒れていた。



「私に勝とうなんざ、500億年早いんだよ!!」



そう、不良です。古い言い方をすると"ヤンキー"。

気がつけばそんなヤンキー達の先頭に立っていて。

今ではそこらの男には負けないくらいの強さを身につけてしまいました。



『お前さん、また喧嘩したんか』



コイツは仁王雅治。

同じクラスで、いつの間にか私をテニス部のマネージャーに入れやがった詐欺師紛いの男。

お陰様で私は雑用の毎日を送っている。



「喧嘩じゃねーよ。タイマンだよ、タイマン」

『朝からハードスケジュールやのぅ』

「…アンタも私のスケジュール埋めに来るか?」

丁重に断る



校内の男子は私を恐れているようだが、コイツは私にビビリもしねぇ。

いや…コイツだけじゃない…。








『明奈、また喧嘩したんだって?』



出た、幸村精市。

違う意味で恐れられてるテニス部部長。

コイツが微笑むだけで泣く子も黙るらしい。


流石の私も何故かコイツには恐怖心を抱いてしまっている。



「け…喧嘩じゃなくて、タイマ」

『騒ぎを起こしたんだろ?』

「いや、別に騒ぎって程じゃ」

『呼び出し、食らったんだよね』



私の話を最後まで聞きやがらねぇ。

絶妙なタイミングで攻撃してきやがる。

これぞ幸村の必殺技"恐怖のタイミング"。



『まったく…こんな騒ぎを起こしてたら、廃部になってもおかしくないんだから』

「廃部にならないんだからいいだろ」



私の家はちょっと権力を持っていて、私が騒ぎを起こしても学校側は何も言えない。

別に私としては何でも良いんだけど、テニス部の連中は良くないらしい。

まぁでも、もし廃部にでもなったりしたら仁王のせいだからな。

私のせいじゃないからな。



「そもそもあっちから吹っ掛けてきたんだし」

『相手にするから悪いんだろ』



なんて真顔で言われた日にはスミマセンしか言えねぇよ。

という訳で、小さく謝る。



「すまん…」

『一応、真田の所にも行くこと』

「わ…分かったよ…」



あぁ、野郎の先頭に立ってる私が…何故かこの男にはこんな感じだ。



明奈先輩!

「うげっ…赤也…」

『うげって何ッスか!』



切原赤也、二年生エース。

コイツは何故か私に懐いていて可愛ら……いや、うざったい。

コイツと出会った頃の私は今よりもっと荒れていて。

野郎を生殺しにしている所を見つかり、それ以降何故か興味を持たれている。




『ちょっと聞いてくださいよ、明奈先輩!』

「お前と話している時間は無いから。じゃ」

ちょーっとちょっと!可愛い後輩が遊びに来てるってゆうのに、つれないッスよ!』



右腕に重力が掛かった。

このクソ急いでる時に赤也が私にしがみついて来やがる。




「離せ、バカヤロー!真田のとこに行かないと殺されるんだよ!!」



幸村の恐怖に赤也を剥がそうと必死だった。

そこに、忍び寄る影が…。



『…何をしている?』

「さっ、真田!ナイスタイミング!」

『うげっ!真田副部長…!!』




赤也は真田を見るなり、青ざめて走って何処かへ去っていった。

やれやれ、助かった。




『北川。また乱闘騒ぎを起こしたらしいな』

「乱闘?違うって、アレは一対一!」

『…黙れ、騒ぎを起こした事には変わりは無かろうが!』

「うっ…」



ヤバイ、真田がキレてる…。

ただでさえ凄い迫力なのに…キレてる時の真田はいつもの五倍の迫力はある。



『今回は反省文50枚だ』

「なっ…何で今回だけそんな多いんだよ?」

『今回で貴様が起こした問題が100回目だからだ』

「う、嘘だろ…?」

『嘘では無い。お前がテニス部に入って以降、俺と幸村は何回呼び出しを食らったと思っているんだ』



そんなに問題起こしてたのかよ…。

確かに中二、中三は特に荒れてたからなぁ。

それくらいはあるかもしれない。



『本来なら100枚にしてやりたいところだが、半分に負けておいてやる』

「そ、それはどーも…」



って、50枚も十分多いわ!!

後で弟子に書かせるか。

一人一枚書けば50枚にはなるだろう。



『筆跡の確認も行うからな。人様に書かそうとしない事だ』

「う…」



読まれてた…。

仕方ない、自分で書くか。

どんだけ頑張っても一週間は揺るぎないな。



『あっ、真田。部長が呼んでたぜぃ』

『丸井。今行く』



うわ、きっと私が真田の所にちゃんと来たか確かめるつもりなんだ…!

行動はえーよ、幸村…。



『何だよ、お前また何かやらかしたのかよ?』

「そんな大した事はやってねぇよ」



大体、私よりかアンタの方がヤンキーに見えるぜ?

赤い髪してガム噛みやがって。

ブレザーだから助かってるけど、学ランだったらお前ヤンキー決定だぜ。



『お、工藤。後でノート移させてくれよ!』

『え、また?』



ホラ、その姿。

カツアゲしてるヤンキーみたいだ。

可愛いからって何でも許されると思うなよ。



『仕方ないなぁ』

『悪りぃな。シクヨロ☆』

「丸井」

『?』

「シクヨロはもう卒業だ。これからは"夜露死苦!"で行こうぜ」

『お、おう……?』


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