一致団結


白石の顔はマジだった。

こうして彼の作戦Xは始まった…。
















(STAGE.15 -一致団結-)













「初めまして、立海大附属から転校してきました北川明奈と申します。この度、四天宝寺テニス部のマネージャーをやらせていただくことになりました。どうぞ宜しくお願いします」



と、私はテニス部員の前で丁寧に自己紹介。

他の部員はまぁおいといて。

約三名眉間にシワを寄せてる奴が居るんだけど。



『ざ、財前…昨日俺らが見たんは錯覚か?』

『ちゃいますよ。俺、きちんとこの目で見ましたから』

『明奈ー?どないしたんやー?いきなり』



私の本性を知ってる奴ら。

うるせぇよ、私だって恥ずかしいんだ、黙れ。

と言いたいのを堪えて、私は俯く。



『謙也、財前、金ちゃん…私語は慎むように』



白石が注意すると、三人は口を閉じる。

やっぱコイツ幸村に近い何かを持ってやがる。


クソッ、逆らえねぇじゃねぇか…!



『ポッ…』

『んまっ、ユウ君浮気ぃ!?』

『小春…!そそっ、そんなんじゃ』

『アカンで!あの子は白石の彼女や!』

ばっ、彼女じゃねぇ!!



と、声を荒げれば、私に集中する視線達。

やっちまった…。



お姫様。やる気はあるんでございますか?



白石はニッコリ微笑んでそう言った。

うわー…怒ってる、怒ってる!

嫌味でお姫様とか言ってくるし!



「ご、ごほんっ…。失礼いたしました」





正直、この特訓はマジで…マジできつかった…!


でも…みんなの協力の下、何とか違和感なく上品なお嬢様を演じられるようになった。




そしてそんな事をしている内に、早くも合宿は明日に迫っていた。









『明奈…いよいよ明日ばい』

「千歳…」

『最初はどうなる事か、いっちょん分からんかったと。ばってん此処まで成長しよるとは…。お兄さん嬉しかよ』

「アンタの妹私じゃねーし」

『「……あ」』



とまぁ、不安は山ほどあるけどさ。

コイツらとなら頑張れそうな気がする。

更に立海も混じるとなれば…私には怖いもんナシだぜ。



『よし、レギュラー全員集まれ。ホラ、お前もや姫』

姫って呼ぶな

『…また一から仕込み直しか?』

「いーだろ、今だけは。明日から頑張るからさ」

『はぁ…。ま、今だけやったらえぇけどな』



私達は輪になって座った。

今からなんか儀式でも始まるのか…?



『えぇか、この合宿の本当の目的は強化やない。他にある』

って、お前…!そんな事みんなに言って良いのかよ!?」

『大丈夫たい。みんな知っとっと』

「……えっ…マジで…?」



周りを見回せば、頷く奴等。

言うなら一言許可とって欲しかったなぁ〜なんて…指導権は全て白石が握ってんだもんな、無理か。

それにコイツが言うって判断したなら、それが正しいのかもな。



『俺らとコイツは…出会ってまだ二週間ちょいしか経ってへん』

「……うん…」

『けど…コイツももう立派な仲間や。何があっても裏切らへん、それを誓って欲しい』

「白石…」



正直…この言葉にちょっと感動した。

突然ポンッと入ってきた私を、"仲間"って言ってくれた。

その暖かさが、心にジーンと染みた。



『当たり前やん!明奈はワイらの仲間や!!』

『てゆうか、俺ら元から知っとったもんな?』

「は?」

『まぁ、一時期めっちゃ噂になりましたもんね』

「う、噂…?」



ちょっとちょっと、勝手に人の噂してんじゃねぇよ!

絶対その時の私クシャミしてんぜ!



『"べっぴんさんが実は凶暴やった"って噂や』

「あぁ!?てめっ…ふざけんなよ、謙也!」

『なぁなぁ!ワイそんなん知らんで!!』

『金ちゃんはあの場におらんかったばい』

『えぇ!?ワイ仲間はずれ!??』

『まぁまぁみんな。個人的な話は後や、後』



白石が馬を扱うかのようにみんなを沈めさせる。

なんか…四天宝寺ってホントお喋りな奴多くねぇか?

こんなんでもチームが成り立ってるのは、白石のお陰だよな…きっと。



『ほんで、何処まで話したっけ…?』

『何があっても裏切らん、ってとこばい』

『あぁ、そうや。みんな…誓えるな?』



みんなは深く頷いて私に笑顔を向けた。



『明奈もやで。ちゃんと俺らの事を信じろや』



白石が私に念を押す。

私は今にも溢れ出そうな思いをグッと堪え、静かに頷いていた。

お前らなら…信じられる。


本当にありがとな。




『そんでまぁ、いくら強化が第一の目的やないとしても、第二の目的はそれやからな』

『わかってるでぇ!ワイは暴れるからなぁ!!』

ハイハイ、金ちゃん静かに。まぁそうゆう事やから、気抜いて行こうなんて思いなや』

『頑張りましょーねっ、ユウ君!』

『おうっ、頑張るでぇ!』

そこの嫌そうな顔してる低血圧な財前くんも分かったか?

『……ハイ…』



財前はやる気の無い返事をひとつ。

その後に"了解せんとけば良かった"と付け足しはあったけど…。

彼も何気にやる気にはなっているみたいだ。



『なら明日の朝9時に、学校の校門前で』

『おうっ』




コツンッ…。

私達は全員で拳を交わす。


この瞬間、みんなの心が通い合った気がした。




さぁ…


出発だ――

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