ご対面
た、確かに真田のあの迫力には誰でも負けちまうよな。
幸村以外の普通の奴ならビビルのも無理ねぇよ。
(STAGE.17 -ご対面-)
「わかった、それなら仕方ねぇな」
『本当はあんな事には使いとぉ無かったんじゃが…』
「それ以上何も言うな!お前は悪くねぇよ!」
私は仁王の手を取り、激しく同情した。
『…やっぱ…明奈先輩ッスね』
『あぁ、全然変わってねぇな』
『………たるんどる』
後ろでそんな会話が聞こえたのは、幻聴…もしくは空耳だったんだろう。
『明奈って、ホンマに立海のマネージャーやったんやな』
『まぁ…これで証明されたみたいやな』
謙也と白石がしみじみとそう語っていた。
「あ、そうだ!お前らは会うの初めてだったっけな?」
私は気付いたように、立海と四天宝寺のみんなを交互に見る。
此処で初めて、立海と四天宝寺のご対面だ。
『会うのは初めてちゃうけど…』
『こうしてきちんと話し合うのは、初めてだよな』
白石と幸村がお互いを見合う。
やべぇ…最強の組み合わせじゃねぇか…。
この空気の中に入りたくねぇ…!
『どうやら明奈の育成に成功したようだね』
『そーやねん。ホンマ、どんだけ汗水流したか…』
「
いやいや汗水流したのは私だから」
寧ろ涙を流したよ。
キツイなんてもんじゃねぇぞ…まさに拷問。
『明奈、そろそろ変装せんで良か?』
「あーそうだね」
『変装?』
「お前らには、この事実知ってて欲しいと思って」
そう言いながら、私は用意してあったヅラとカラコンを装着。
見る見るうちに別人のようになっていく私に、立海一同は驚いていた。
「どう?四天宝寺テニス部、大和明奈です」
『大和…明奈…?』
「そう、この青光りするような綺麗な黒髪に、目の奥を読ませない黒い瞳。まさに大和撫子だろv」
なんて言うと、立海のみんなは少し呆れたような顔をする。
久しぶりに見たぜ、その顔。
『明奈…
何で変装する必要があるのかな?』
幸村が私に尋ねた。
うわ、この顔!
絶対理由なんて見抜けてる筈なのに敢えて聞いてくるとは…。
素晴らしく虐めだぜ!
『大方、何らかの理由で氷帝側に姉だとバラしてしまったのだろう』
ピンポンピンポン、大正解です。
景品はでませんが、大正解です。
流石参謀…だてに達人と呼ばれてませんよねー。
『バーカ』
「
口から出てる風船割ってやろうか?」
そうです、馬鹿なんですよ私。
ただアンタに言われるとムカツクぜ、丸井。
『ところで、氷帝は何処におるんや?』
『氷帝と青学は、既に中で待機している』
『なら…そろそろ行った方がええな』
『そうだな』
白石と柳はそんな会話を交わした後、私達を誘導してくれた。
そして、いよいよ…憎き氷帝とご対面。
頑張れ、私。
そう自分に言い聞かせて、ドアを開ける。
『遅かったな』
跡部はそう言って立ち上がる。
ジロジロとこちらを見始めると、私と目がかち合った。
どーかバレませんように…!
『そっちにもマネージャーが居るのか。なら丁度良いな』
「…宜しく」
あんまり喋るとボロが出るので、クールな女を演じて口数を少なくする私。
我ながら演技も完璧だ。
あの男も気付いてないぜ。
『おい』
「…何かしら?」
この男…どんだけ偉そうなんだよ。
『翔子とマネージャーの仕事をして欲しい』
「了解、分かったわ」
翔子…城崎翔子の事だな。
どんな奴か、私が見極めてやるぜ。
『飯の準備も二人で大変かもしれないが、宜しく頼むぜ?』
「えぇ、大丈夫」
『何かあったら直ぐに俺に連絡しろ』
そう言って、跡部は私に電話番号の書いた紙を渡す。
イタ電でもしてやりてぇな。
『それと…』
「?」
『翔子は俺の女だ。何かしたら許さねぇ』
「フフッ、何もしないわよ」
やべぇ、今本気で笑った。
何。君あの女の子に溺愛してるんですか?
『なら良い。お前、名前は?』
「大和明奈」
思いっきり偽名ですが、宜しくね?
『明奈か。覚えておこう』
上の偽名全く意味ねぇー。
つーかテメェ…軽々しく名前で呼んでんじゃねーよ!
『翔子、自己紹介しろ』
ひょこっと椅子から立ち上がって、こっちに来る城崎翔子。
なんつーか…女の子中の女の子みたいな奴だな。
ふわふわと巻いてる髪に、クリッとした目。
色白で華奢なその体は、思わず男が守ってやりたいと思ってしまうくらいだ。
私は男じゃねぇから思わないけど…きっと世の男性はそう思うだろう。
『城崎翔子です。ヨロシクね』
おまけに声まで可愛いし。
この女…まさに男が描く理想の女性像だな。
「大和明奈よ。これから一緒に頑張りましょうね」
だけど、だけどさ…可愛さで言うと優奈も負けてないよ?
寧ろアンタなんかより優奈の方が何千倍も何万倍も何億倍も可愛いし。
親友だか何だか知らないけど、優奈から奪ったその場所
返して貰うからね――?
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