物語
[翔子side]
優奈が私の目の前から消えて約1ヶ月。
今度は違う女が現れた。
(STAGE.18 -物語-)
大和明奈?
正直言って私の敵では無い。
だけど、景吾の目が少し優しい気がするのは…私の気のせい…?
『あっちのマネージャー、偉いべっぴんやな』
『まさに大和撫子って感じだよな』
侑士と岳人が話しているのを聞いて、私は心の中で舌打ちをした。
どうしてあんな女を褒めるの?
ただの透かしてる嫌味な女じゃない。
『まぁでも、翔子かて負けてへんよな』
侑士がそう言った。
負けてない…?
ふざけたこと言わないでよ。
私に敵う女なんて居ないの。
私が一番なのよ。
『コートを案内する。マネージャー以外は俺に付いて来い』
みんなは景吾について行き、私と大和明奈の二人が取り残された。
『それじゃ、私達も行きましょうか』
「…そうですね」
大和明奈は、ドリンクを作る為に厨房の方へ移動する。
忌々しい女。
漸く邪魔なゴキブリを消したと思ったら…もう一匹隠れていたみたいね。
潰してやる…。
完膚無きまでに。
『城崎さん、この中に水を入れてくれる?』
そう言って大和は私にボトルを差し出した。
なんで私がアンタに命令されなきゃいけないの?
『城崎さん?』
「嫌よ。貴方がやればいいじゃない?」
私はプイッとそっぽを向く。
年上だか何だか知らないけど…偉そうにされるのは我慢出来ない。
『フッ…』
大和が私を鼻で笑う。
この女…本当にうざったい。
私は思いっきり大和を睨んだ。
「何笑ってんのよ」
『いえ…跡部景吾とそっくりだと思って』
「景吾と…?どうゆう意味よ」
『二人とも…自分勝手でワガママな人よね』
完璧に私を馬鹿にする大和の顔を見て…頭に来た。
これがこの女の本性なのね。
この二重人格女。
アンタも嫌われれば良いのよ、みんなに。
その時は高らかに、笑ってあげるから。
「良いの?そんな事言っちゃって」
『あら、駄目だった?』
「アンタは景吾の恐さを知らないのね」
『知らないわ。全く恐くないもの』
「その内分からせてあげる」
『そう。楽しみにしてるわ』
大和はニッコリと笑った。
わざとらしいその笑顔も、あー言えばこー言う生意気なその態度も…私の怒りの源だわ。
私はアンタの全てが大嫌い。
だから必ず…アンタを懲らしめてやる。
「ねぇ、面白い話してあげよっか?」
『面白い話…?』
「"城崎翔子物語"」
『…下らないわね。口じゃなくて手を動かしなさいよ』
大和はそう言いながら淡々とドリンクを仕上げていく。
まぁまぁそう言わずにさ。
聞いたらきっと、私を敵に回した事…後悔するよ?
「ほんの一ヶ月前の話です。氷帝テニス部にはもう一人、部員がいました」
私は大和に向かって語り始めた。
「その子はマネージャーでは無く、プレイヤーとしてテニス部に入っていました」
私はそいつの事が大嫌いだった。
何故か?
全ては二年前。
「その女は、同じ部とゆう立場を利用して、私の好きな人を奪った」
その時、私はその女に復讐を誓った。
やられたら…やり返す。
そして私はテニス部のマネージャーになって、みんなとの信頼を築いて…計画を実行した。
「その時色々あって、部内は険悪なムードが漂っていて」
原因はあの女にあった。
丁度良い、今しかない。
私はそう思った。
「あの頃の思い出…今でも忘れられないわ」
事は気持ちの良いくらい、トントン拍子に進んだ。
何の狂いも無く、全て私の思い通りに進んで行く。
ついに私の計画は成功。
「私はその女を追い出す事と…景吾の女になる事に成功した」
そう、私に怖いものなんて無い。
そして私を敵にしたものは必ず不幸になる。
「ところがところが…そんな事も知らずに私の前に表れた女が居た」
『………』
「その女は私に宣戦布告して来ました」
本当に、馬鹿よね。
"私を敵にしたものは必ず不幸になる"
例外は無いのよ?
私は大和を指差した。
「私はまた…害虫駆除で忙しくなりそうです。つづく」
不適な笑みを浮かべ、私は話を終えた。
まだまだ話は続くんだけどね。
私がハッピーエンドになるように…。
『物語には…』
大和が口を開いた。
『起承転結があるって知ってるかしら?』
「きしょう…てんけつ…」
『貴方のその話は"起"に過ぎない』
そして大和は…私に向かって言った。
『最後に笑うのは私達。覚悟しておきなさい』
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