挑戦状
『俺と勝負しろ――』
確かに跡部はそう言った。
私に向かって…。
(STAGE.28 -挑戦状-)
確かに昨日、勝負しろとは言ったけど…こんなに早いとはな。
いーぜ、受けて立ってやる。
私は誰にも負けない。
「1ゲームで良いだろ?」
『何でも構わねぇぜ』
私はコートに入る。
と同時に、気付いた。
ラケット持ってねぇ…!
『明奈、俺ので良かったら使いなよ』
「幸村!サンキュー」
良かった、お前のラケットなら信用出来る。
アイツらに借りたら、どんなボロっちぃのが出てくるか分かんねぇもんな。
『ホンマにやるんか…!?』
『明奈先輩じゃ無理っスわ』
『ワイがやりたいー!!』
『いやいや、相手が悪すぎるやろ!』
白石、財前、金太、謙也…
口々に物を言う奴ら。
やるっつったらやるんだよ。
いちいち口を挟むな。
「
うるさい!」
4人を黙らせて、私はコートに立った。
ヒュゥゥウウウウ…
やべぇな…今日は風が強い。
ヅラが飛んでかねぇように祈るぜ。
『サーブは交互で良いだろ?』
「良いけど」
私サーブ大得意なんだよな。
今までの試合、ほとんどサーブで勝ってるようなもんだったし。
それでも良いならその条件でオーケィだけど。
『じゃ、俺から行くぜ?』
跡部がニヤリと笑う。
そしてサーブを打つ。
あぁ?何だ、このサーブ。
テメェ…私をナメんなよ…?
――パコォォンッ!!
跡部のヒョロサーブを、リターンエースで打ち返す私。
まだまだ鈍ってねぇな。
それどころか、小学生の時よりパワーが増してる気がするぜ。
『………』
唖然とする周りの奴ら。
か・い・か・んv
「審判…コールしてくださる?」
『…ッ、0-15』
審判台に座っていた忍足は、唇を噛み締める。
だから私、イギリスのJr.チャンピオンなんだって。
悪いね。
――パコォオオン…ッ!
そしてサービスエースを決める私。
『アイツ…何者なんだよ?』
『マグレだろ!今まで跡部からサービスエースとれた女なんて…』
『でも…あれ程の球を打てる人なら、何処かの大会には出てる筈っすよ!』
氷帝軍団は慌てふためく。
『どうなんだい?乾』
『うーん…大和明奈なんて名前は聞いた事が無いが』
『アメリカで大会に出てたとかじゃないッスか!?』
『
俺は聞いた事無いッスよ』
惜しいね、アメリカじゃなくてイギリス。
ちなみに言っとくけど、
私は優奈より強いからな――?
『フッ…クククク…』
いきなり跡部が笑い出した。
「何よ」
『お前を甘く見ていたようだ』
「負けた理由にはならないからね?」
『馬鹿言え。俺はお前みたいな女には負けねぇぜ』
コート内でも見下ろされたように感じた。
唯我独尊…アンタの為の言葉だな。
『
はぁぁぁああああ!!』
「…ッ!?」
跡部の打った球は、バウンドせずに転がる。
何だ、今のは…。
『フッ…15-30や』
さっきと打って変わって、忍足は誇らしげに笑う。
何者なんだよ、跡部って…。
いや、気を抜くな。
私は負けるわけにはいかねぇんだよ…!
『さぁ、来いよ』
跡部の挑発に、私は全身全霊をかけてサーブを打つ。
それを平然と打ち返す跡部。
流石、氷帝の頂点に立ってるだけあるよな。
強い…こんな奴と戦うのは初め
『Will you play a game with me sometime?』
「――…ッ!」
力強い球が、私の横を綺麗に通り抜けた。
「思い、出した…」
全てが走馬燈のように私の頭の中を駆け巡っていた。
『テメェ…今のは打てただろ!』
「跡部…景吾…」
『アァン?』
私、アンタの正体分かった…。
私がずっと会いたくて会いたくて堪らなかった奴。
まさかこんな形で会うなんて…。
『何なんだよ』
「いや、別に…」
私はアンタに負けるわけにはいかない。
優奈の思いも、私の思いも込めて
私は戦う。
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