転部


そ…そうだ。

なんか聞いた名前だと思ったら…この人…テニス部の部長じゃねぇか!

柳から貰った資料に書いてあった!



『問題起こします宣言してたって聞いたけど、早速問題起こしたみたいやな』



そう言って白石はニッコリと笑った。

















(STAGE.06 -転部-)














ゆ、幸村様っ…!

この男…幸村の笑いにちょっと似てねぇか!?



『一部始終、しっかりと聞かせていただいたわ』

「ち…違う!これは正当防衛だ!」

『あ、反省文50枚。真田くんから確かに受け継いだから、きちんと書いて貰うで?』



何で受け継ぐんだよ、んな余計な事!

転校したから反省文書かなくてラッキーvとか一瞬でも喜んだ私の希望を返せ!



「大体!私がいつテニス部に入るって言ったよ!?」



そーだよ、そーだよ!

入らなかったら反省文とかチャラだ!



『アレ?此処に契約書があるんやけどなぁ』

「は…?け、契約書…?」



白石はポケットから封筒を取り出し、静かに広げて私に見せる。



『ハイ、音読して』

「え、えっと…"私、北川明奈は、立海テニス部から、四天宝寺テニス部に転部します。約束を守らない場合は、奴隷にでも下僕にでもなります。 立海のアイドル北川明奈"」



ちょっと…コレって…。







『明奈、後輩が入院したらしい』

「マジで?そりゃ大変だね」

『と言うわけで、みんなで手紙を書くことにしたんじゃ』

「ふーん。で?」

『お前さんの名前、ここに書きんしゃい。手紙の内容は俺が考えといてやるけぇ』

「お、仁王にしては気が利くじゃねぇか。変なこと書くなよ?」

『任しときんしゃい。どーせお前さん、こうゆう事は面倒臭いんじゃろ?』

「当たり前じゃん。生死彷徨うくらいの事じゃなきゃ私は動かねぇよ。…っと、ハイよ!」

『…アイドルって…全然そんなキャラじゃなかよ』

「テニス部の女は私だけだし、十分アイドルで通用するだろ?」





って、あの時の…!!

あの野郎またもや私を騙しやがって…!

最後まで本当にウザイ奴だな!



『奴隷になるか、マネージャーになるか、どっちかや』

「――ッ、くっそー…」

『ま、答えは決まってると思うけど、どーしても奴隷になりたいっちゅーんやったら』

「わ…わかったよ!マネージャーにでも何でもなってやるよ!」



どうせ此処まで雑用やってきたんだ。

一年延びようが延びまいが、変わりねぇよ。



『明奈、テニス部入るん!?』

「オイ、金太!私がテニス部入るからには、その生意気なタメ口は許さねぇからな」

『やったー!!めっちゃオモロそうやん!』

話を聞けよ、チビ



このチビ…赤也より厄介な事になりそうな予感がするのは、私だけか…?



『北川さん、やっけ?家何処なん?』

「あっちの方」

『なんや、俺と同じ方向やん』

「ふーん。なら、一緒に帰るか?」



一応家を把握しとかないといけないしな。

朝コイツと会わないルートとか調べとかないと。

ちなみにこの作戦は幸村には効かなかったけどな…。

あの野郎、裏の裏の裏の裏を読みやがって。

考えてたら切り無いから、おとなしく普通のルートで通ってたっけ。



『俺まだ授業あるから、4時間ほど待って貰える?』

「ふざけんな、無理」

『…プッ、アハハッ!』



白石は腹を抱えて笑い出した。

何だよ、私そんなに面白い事言ったか?



『ホンマ、柳くんが言ってた通りの子やな!』

「や、なぎ…だと?」



く、そっ柳め…!

一体どんだけ私の情報吹き込んでんだ、馬鹿野郎!

手の内さらけ出してんじゃねーよ!



『まぁええわ。我が儘な姫の為に早退したるわ』

「ひ、姫…!?」



何て私に不似合いな言葉なの。

てゆうか、そんな理由で早退とかアリなのかよ。



『てことで、金ちゃんは早よ授業行かな間に合えへんで?』

『えー…ワイも早退』

『アカン。金ちゃん授業サボりすぎや』

『へーい…。ほなら明奈、また会おなっ』

「ハイハイ、じゃあな」



金太は大きく手を振って去っていった。

まさか此処でも子供のお守りをする事になるとは。

テニス部ってこんなもんなのか?




『ほな、行こか』

「良いのかよ?何も言わずに早退して」

『大丈夫や。こんな事になりそうな気してたから、予め言っておいたわ』

「…柳に吹き込まれたんだろ?」

『よー分かったやん。柳くんの言うことは百発百中やな』



クックック、と笑う白石。

私は何も面白くないけどな。

自分が知らない人に、自分の事を理解されてる事ほど面白くねぇ事はねーよ。



『立海のマネージャーが来るって聞いたから、もっとピリピリした奴が来るんかと思たら…意外とオモロイ人が来たからビックリしたわ』

オモロイって何だよ



これでも私は頂点に立った女なんだ。

面白いとか…まるで芸人じゃねえか…!



『不良なんて馬鹿らしいとは思うけど、北川さんなら大丈夫やわ』

大丈夫ってどうゆう意味だ?



もっと恐れてくれよ、私を!

威厳のないヤンキーなんて、カッコ悪すぎじゃねぇかよ!



「あ、此処」

『ん?此処は確か、北川とかゆう大富豪の……って、まさか』

「そうだ、私んちだよ」

『ホンマか!?あ…そうか、そうやんな。柳くんが言ってた"秘密"ってこの事か…』

「秘密って…アイツ何言ったんだよ?」

『テニス部が廃部にならん秘密』



チッ、そんな事まで言ってやがったのか。

親のすねかじりみたいで嫌だな、ソレ。



「…優奈…!」



門を開けた庭の所で、妹の優奈を見た。

白いワンピースを着て、相変わらず可愛い私の妹。

私は思わず駆け寄った。



「優奈!久しぶりだな!」



と、私が話し掛けると、キョトンとしている優奈。

そして一言こう言った。






『――…誰?』

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