Act.16 ラナイ感情





ただ単純に…


テニスがしたかっただけ…――






























-Act.16- ラナイ感情


















「今まで、ワイら…みんなが勝つこと…全力で信じてたやん…」



そう…全力で。

だからこのチームで、此処までやってこれた。

このチームだから、全国大会へ行けた。



「疑う事しか出来ひんくなって…疑う事で頭がいっぱいになって…それで仲間を、殺して…」

「金ちゃん…」

「嫌や…こんなんもう嫌やぁ…ッ!!」









――ピピピピピピ







「!!首輪が…。金ちゃん…!」

「怖いとか、憎いとか、苦しいとか…もうこんな感情イラン…」

「分かったから!はよせなホンマに…ッ」









――ピピピピピ



「ワイはっ…仲間が好きなだけなんや…ッ!!」

「!…金、ちゃん…」

「忘れたくない…楽しかった想い出を…」

「…………」



生きる事に必死になって…それで?

自分以外の人を殺して…それで…?

残る物は何?

憎しみ?それとも…喪失感?



――…忘れてた。




「忘れてたわ…みんな」

「白石…」

「全国大会で…優勝しような、って…約束…」



白石の目も涙で溢れた。





――ピピピピピピ


首輪から発せられている音は未だ止む気配は無い。



「俺も…大好き、やったんや…みんなの事…」

「…そうや…」

「生まれ変わったら…テニス、出来るとええな…」

「うん…ッ」





――ピピピピピ、ピ…



「金ちゃん」

「白石…」

































―ありがとう―
















――ボォォオオオン…!!!



首輪が破裂して、大量の血が中庭を染めた。

吹き出した二人の血は止まる事など無く…死亡。
















死者:四天三年 白石蔵ノ介
   四天一年 遠山金太郎
残りの人数:22名











…――


「今…何か音がしなかったか?」

「参謀。聞こえんフリをするんじゃ」



柳、仁王は、相変わらずパソコンで調べ物をしていた。

先程の放送で、二人は少なからず動揺していた。

ポーカーフェイスな二人だからこそ…顔には出さないけれど。



「それで、何か分かった事はないんか?」

「…この首輪の事だが…盗聴器と心臓音感知機能が付いている」

「ほう」

「当然会話は全てあちら側に筒抜け。そして心臓が動かなくなった瞬間…爆発、とゆう事だ」

「なるほどのぅ…」



柳の優れたハッキング技術で、首輪の構造まで辿り着いた。

しかし、問題はその後だった。



「首輪を取る方法を見つけた」

「流石参謀。目ざといのぅ」

「が、しかし…相当複雑な方法だ。無理に等しい」

「…何とかならんのか?」

「成功する確率は10%…あるいはそれ以下か…。失敗すれば首輪が爆発して即死だ」

「俺達に選択肢はないぜよ。可能性がある限り、試してみる価値はある」



柳と仁王は互いに見つめ合い、頷く。

やれるか、やれないか…そんな事は問題では無い。

やるしかない、それが自分達に与えられた選択肢。



「まずは材料集めだな」

「…理科室とか、ありそうじゃのう」

「よし、ならば移動するぞ」



と、廊下に出て渡り歩く二人。



「…?参謀、アレ見えるか?」



少し歩いた所で、仁王が何かを見つけた。



「あれは…」

「まさか…赤也か!?」



前方にフラフラと壁にもたれながら歩く切原の姿。

切原の服は真っ赤に染まっていて、切原自身もぐったりとしている。



「赤也…!!」



そんな彼のもとに駆け寄る二人。

何かある、と察知はしていた。



「!!」



けれど切原の持つ血の付いた武器を見て、それが確信に変わる。



「に、仁王先輩に…柳、先輩…」



切原は二人の顔を見るなり、安心したように涙をポロポロ流し始めた。

ごめんなさい、と何度も繰り返しながら。



「取り敢えず、お前も来い」

「そうじゃ。こんな所で泣いとったら、目立って仕方ないぜよ」



二人は取り敢えず切原を理科室まで運ぶ事に。



「此処だ」

「よー分かったのぅ」

「校内の構図も調べておいたからな」

「ほぉ〜」



ガラッ、と理科室を開けてみれば、微かに残る大量の血の跡。

呆然としながらも、確かな恐怖を感じた。



「これは…ちとキツイのぅ」

「理科室には凶器が多い。恐らく、此処にある物で殺し合ったんだろう」

「一応鍵かけておくか…」



仁王が鍵をかける。

そして切原を椅子に座らせた。



「赤也、聞きたい事はたくさんある。答えて貰うぞ」



そう言って柳は赤也の前に座る。

赤也は黙り込んで震えたままだった。

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