Act.1 夢の始まり






――…せ、殺せよ。











それでお前が生き残れるのなら…










俺を、せ…――















-Act.1-夢の始まり













「明日から一週間、合同合宿を行う」



事の始まりはこの一言だった。

この時期に、しかもいきなり合宿だなんておかしいと思った。

しかし氷帝の柱の跡部が言うのだから、逆らう事なんて出来ないし、増してや逆らう理由もない。

だから誰も反対する事もなく、その計画を呑んだ。




この合宿が…あんな事になるなんて知らずに…――




「参加校は、青学・立海・四天宝寺…そして、我が氷帝だ」

「マジマジ!?スッゲーじゃん、ソレ!!」



相手校は強豪揃いで、不足など微塵もない。

いつも寝惚けているジローが興奮するぐらいなのだから相当凄いと思われる。

まさに最強の合同合宿なのである。



「ちなみに、参加するのはレギュラー陣のみだ。他の奴等は学校に残って留守番でもしてろ」

「レギュラーだけだとよ、滝」

「ちぇ、俺も行きたかったのにな。まぁ楽しんで来てよ」



合宿に行く事が出来るのはレギュラー陣のみ。

氷帝は、跡部・忍足・向日・宍戸・芥川・鳳・樺地・日吉、の8名が参加となった。



「青学にリベンジするチャンスだからな、緩むんじゃねーぞ」

「うーっし、なんか俺すっげえワクワクして来た!!」

「アイツ等には、借りを返さなアカンからなぁ」



それぞれが色々な想いを胸に、合宿の日を楽しみにしていた。

マネージャーの絵梨香も例外ではなく、明日が来るのを待ち焦がれていた。

明後日には、自分の未来が真っ暗になるなんて知る由もなく…。






「だーっ!!遅えよ、岳人!!」

「悪りぃ、昨日なかなか眠れなくて…」

「遠足前の小学生かいな」

「小学生って言うなよ!!クソクソ!!」




一日はそんなたわいもない会話から始まった。

バスに乗り込むまでは何の異変もなくて、普通の日と何ら変わりのない一日だった。

バスに乗り込んでからも、みんなはいつも通りで。



「景吾、隣に座っても良い?」

「ああ」

「ククッ、お前らホント仲良いよなぁ?」



跡部と絵梨香を岳人が冷やかす、そんな有り触れた日常だった。



ただ、あの眠りにつくまでは…――







「――ッ…」



一番最初に目覚めたのは絵梨香。

まだ頭が働かない様で、意識が朦朧としている。







「…え…?」



気付けばそこは教室だった。


ボロボロになった教室、その中には今日集まる筈だったみんなが眠っていた。

一体何が起こっているのだろう?

頭をフル回転させてみるが、どうしても答えが出なかった。

自分は寝惚けているのだろうか?

その想いだけが頭の中で駆け回っていた。





「――ん…」

「景吾…!!」



タイミング良く跡部が起きる。

跡部の肩に触れる感触が、妙にリアルで怖かった。

どうか夢であって欲しい。


そう、思っていたのに…。



「…何だよ、此処は…」

「わかんない…、でも起きたら此処にいて…」



跡部の表情も険しくなっていた。

この状況を理解するのは容易い事ではなかった。

つい先程までバスの中で眠っていた自分達が、今は何処かもわからない教室にいる。


一体、何が起きた…?

この謎に答えなんてないような気がした。





「…ふぁ〜あ…」

「ジロー」

「…ん?ここ…何処?」

「な、なんやねん…この教室…」



ジロー、忍足に続き、みんなが起き出す。

この状況を理解出来る人は一人もいなかった。

やがて教室は混乱と動揺で溢れた。




「俺等バスの中で寝てへんかったっけ?」

「その筈、なんやけど…」


四天宝寺の忍足と白石も、



「いつの間にこんな所へ来たんだ?」

「俺にも…わかんにゃい」


青学の大石、菊丸も、



「一体…此処は何処なんッスか?」

「それが分かったら動揺などしていない」


立海の切原も、柳も…



誰一人として、此処に来る過程を見ていない。

バスの中にいたらいつの間にか寝ていた。

みんなが口を揃えてそう言う。



これから…何が始まるんだ…――?











『――ようこそ、テニス部の皆様』




暫くして、放送から声が聞こえて来た。

しかしその声を聞いた瞬間、何か嫌な予感を感じた。



自然と鳥肌が立つような、そんな嫌な予感を――






「誰なんだよ、お前は…」



切原が口を開く。

放送から聞こえる声に何を言ったって無駄だろう、みんながそう思った。

しかし、それは数秒後に覆されることになる。



「私の正体など、どうでも良い」



切原の声に、反応した。

と言う事は…、何処かで監視されている…?

沸いてくる恐怖心がみんなを襲う。




「何が、目的なんだよ…?」



再び切原が口を開くと、一同は唾を飲み込む。


教室中に緊張感が漂う。





『…単刀直入に言おう、』






放送からそう聞こえ、次の瞬間…信じられない言葉を耳にする。
































君達には殺し合いをして貰う





「――…!!」

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