Act.18
限りない恐怖
死ぬのが怖い
殺されるのが怖い
裏切られるのが…怖い
一体何人殺せば、この恐怖から
解放されるのだろう――
-Act.18- 限りない恐怖
「…ッ、ハァ…ハァハァ…」
「大丈夫か?侑士…」
「っぐ…アイツ…絶対許せへん」
脇腹を押さえる忍足侑士。
どうやらジャッカルの最後の抵抗により、脇腹を痛めたようだ。
「許せへんて…もうアイツはおらんっちゅーのに」
「ッ、油断した…肋骨折れてんちゃうか…」
止め処なく、額から汗を滲ませる侑士。
ポタポタと滴り落ちる汗が、激痛を物語っている。
「ちょっとそこで休もか」
「……っ…ああ…。悪いな…」
大きな木に寄りかかる侑士。
その隣に、謙也も腰掛ける。
「こりゃ…一戦一戦気を抜かれへんな…」
一瞬も気の緩みは許されない。
張り詰めた緊張の糸を切る時が、自分達の死期。
「謙也…お前とは、何かと張り合ってきたな…」
「なんや侑士…急にどうしたんや…?」
「いや…。そんなお前と…こうやってタッグを組んでることが、不思議に思えてな…」
「…せやな。俺達の初めての共同作業が…人を殺すことなんて…皮肉なもんや」
思わず笑いが漏れる二人。
笑っていられる状況ではないのに、笑わずには居られない。
「なんか…しょーもないな…人生って」
謙也が大空を見つめる。
「一生懸命…全国大会目指して頑張って…真面目に生きてても…俺達は結局、こんなところで死ぬんやろうなぁ…」
「…何を言うてるんや」
侑士がボウガンを渡す。
「…なんやコレ…どうゆう意味や…?」
「俺は…もう動かれへん……」
「…お前…」
謙也は悟った。
きっとこのボウガンは…“これを持って、逃げろ”という、侑士の伝言だということを。
「アホぬかせ…!お前置いて逃げれるか!!」
「ドアホ。この戦いに情けは無用や。…お前もよう分かっとるやろ…?」
返す言葉が無かった…。
静かに、ボウガンを受け取る謙也。
そして、力強く握り締めた。
「侑士。俺は…
お前を裏切る…」
「………」
侑士は笑った。
そして謙也が強く握り締めているボウガンを掴んで、自分に向けた。
「ええよ。…ヤレや」
どうせ自分はもう、走って逃げることも出来ない。
何れは誰かに殺されるだろう。
生きることを諦めざるを得なかった。
ココでこの男に殺されることが、自分にとっては幸せなことではないか。
普段の生活では一生思うことのない思考。
でも、今はそれが自分の頭の中を占めていた。
「
バカヤロー。そうゆうことちゃうわ」
「え…?」
「お前を守る…絶対に」
謙也は立ち上がり、ボウガンを構える。
「お前…大バカか」
「ええよ、大バカでも。俺…ここでお前を見捨てたら、ホンマに大事なもんも無くなってまう気がするから」
本当に、大切なもの。
人を殺して、人の命を奪って、もう…自分達には何も残っていないと思っていた。
まだ何か残っているとしたら…
それを見てみたい気がした。
「英二、これは…!!」
「血…だよね…」
後方から声が聞こえて、ボウガンを後ろに向ける謙也。
「…大石と、菊丸か…」
先程のジャッカルの返り血を見つめる二人。
きっとまだ、この戦いの恐ろしさを知らないのだろう。
そんな大声で喋っていては、敵に居場所を知らせているようなもの。
「どないするんや…?謙也…」
「どないするって…お前を守るためには、待ってられへんやろ」
「謙也…」
「
先手必勝や…!!」
――ビュン…!!!
勢い良く、ボウガンの矢が飛ぶ。
「ぐっ…!!!」
「
大石ぃ!!」
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