Act.20
戦う意味
死んでいった仲間の為
殺された仲間の為
殺した仲間の為
自分以外の誰かを思いながら、
戦っているんだ――
-Act.20- 戦う意味
「お前…不二…!!」
「けん…や…。よう…きけ…」
「侑士…
もう喋んな!!」
矢で蓋をされているにも関わらず、傷口から溢れ出す毒々しい血。
このままではきっと、侑士は死んでしまう。
そう思っていても、謙也にはどうすることも出来なかった。
「も…う、おそい…んや…」
「そんな…」
「けん…や……」
「…なんや?」
「……ありがとう……な……」
そう伝えると、ピクリとも動かなくなってしまった侑士の体。
遠のく意識の中で、最後に振り絞った言葉…。
“ありがとう”
その言葉を発した彼は、それ以上喋ることは無かった。
「侑士…侑士……
侑士ぃ…――!!!!」
死者:氷帝三年 忍足侑士
残りの人数:19名
謙也は思い切り不二を睨んだ。
「お前…ふざけんなよ…!!!」
「ふざけるな…?それはこっちの台詞だよ」
ゆっくりと近付いて来る不二。
「見てたよ。
君が仲間を殺すところを」
「
…!!」
「…見ていることしか出来なかった。もう、手遅れだったから…」
どうやら不二は、菊丸にトドメを刺す瞬間に謙也に気付いたようだった。
そして、菊丸の首輪が爆発するのを、ただ見届けることしか出来なかった。
「君に聞きたい」
「…なんや…?」
「ボウガンを放つ時、どんな気持ちだった?」
こんな近距離で、弓矢を構える不二。
明らかな殺意。
でも、謙也は動揺することなく、不二を睨む。
「
最悪や。その一言しか出てこーへん」
「………」
構えた弓を下に下ろした。
「…殺さへんのか?」
「僕は…無駄な殺生はしないよ」
――ピーッ、ピーッ、ピーッ…
「どうせ、死ぬだろ…?」
コイツと一緒に死ぬ…
そう決めた時、いきなり心が軽くなった。
何も残っていないと思っていたのに、こんなに重たいものを背負っていたなんて。
謙也の口からは思わず笑みが漏れる。
「…さっき、お前の仲間が言うてたわ」
― パートナーと死ねて良かったよ ―
謙也は侑士の顔を見つめた。
ダブルスのパートナーでも何でもない。
だけど、謙也にとって“いとこ”と言う存在は
「人生のパートナー…俺こそ、ありがとうな…」
――ボォォォオオオオン…!!!!
死者:四天三年 忍足謙也
残りの人数:18名
…――
「…何がしたい、か…」
モニターを見つめながら、笑みを見せる狂魔。
無意識に見せるその笑みは、虚しさしか残っていなかった。
「狂魔様…」
「それが分かっていたら、こんな無駄な戦いは起きない」
「…ごもっともです…」
「ただ…」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を覆う絞魔を、狂魔はただ見つめた。
「何かが動いている…」
「…何かが…?」
今まで冷酷に戦いを観戦していた狂魔も、焼魔も、絞魔も…死んでいった爆魔も。
この戦いで、ガチガチに固められていた感情が動き始めていた。
「最後の一人…親友ですら無情に殺せた絞魔でさえあのザマだ」
「絞魔…」
「絞魔だけじゃない…お前も、何かを感じているんだろう?」
「………」
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