Act.6 む世界





涙の数は無限大の筈なのに



あたしの涙は此処で





枯れてしまいそう…――









































-Act.6- む世界



















「――ッ…やめて…」



自分に向けて撃った筈の弾は、いつの間にか金色に直撃。

金色の脇腹に思いっきり貫通した。



「なんで…邪魔すんの…ッ!?」



発砲する直前、誰かに手を掴まれた。

そしてその手は絵梨香の手を引っ張って…自分を傷付けた。

金色が、自らを犠牲にして絵梨香の自殺を阻止したのだ。



「…ッ…死んだら…アカン」



苦しみながら、血を吐きながら、金色は一生懸命訴える。



「…アンタ…が…死んだら、…この子は犬死に…やで…?」

「――…樺地、くん…」



跡部と自分の為に犠牲になった樺地の顔は…血の気が引いていて、青白かった。


守られてる、それがどれだけ幸せな事なのかは分かっていた。

今自分が死んだら、守ってくれた跡部や樺地に悪いと言う事も分かっていた。

それでも、生き残ると言う事がどれだけ辛い事なのかを…知りたくなかった。



「…貸し…ッ」



そして金色は絵梨香が持っている銃を無理矢理奪い取った。

武器を奪い取られた二人は焦る。



「何、すんだよ…ッ!!」



戦いにおいて、自分の武器を奪われると言う事は…死を意味する。

跡部は絵梨香の前に立ち、絵梨香を守ろうとする。

金色に殺される、そう覚悟した跡部は…静かに目を瞑った。



そんな跡部を見て、金色は優しく笑ってこう言った。



































「…生き残りや……?」




























――ドォォオオン!!!











































金色が撃った弾は…金色自身の頭を通り抜けた。

勿論…即死。




















































死者:四天三年 金色小春
残りの人数:29名












































血しぶきが顔に掛かる。

自分達の顔はもう、血でいっぱいだった。


一体これで…何回目…?







「――もう、嫌…ッ!!」



自分が生き残る事で人が死ぬのならば、死を選びたい。

彼女は痛切にそう思った。



「…早く…、死にたい…ッ…」



そう言った瞬間、額に冷たい感触がした。



「…景、吾?」




気がつけば、跡部が自分の額に銃を突き付けている。

冷たい目で絵梨香を睨む跡部。

そして一言、



































「じゃあ…死ねよ?


そう言い放った。





――――…



ザッザッザッ…



校舎の中で足音が響く。

此処は恐らく、体育館。

体育館に居ると言うのに相変わらず砂埃でいっぱいだった。



「さっきから、隠れていないで出てきたらどうだ?」



足を止めて後ろを振り向く。

彼は立海のマスター、柳蓮二。



「やっぱり、気付いとったんか?」

「足音が二重になっていたら嫌でも分かる」



そして柱から出て来た彼が仁王雅治。

彼が柳の後を付いてきたのには理由があった。



「真っ先に単独行動をしそうなお前が、俺の後を付けるとは珍しいな」

「流石は参謀じゃ。余計な説明をせんでも良さそうじゃのぅ」



そう言って仁王はノート型のパソコンを取り出した。



「…パソコン?」

「そうじゃ、何でも俺の武器らしい」



彼の武器はパソコン。

使い様によっては、最低にも最強にもなる武器だ。



「俺の言いたい事、分かって貰えたかのぅ?」

「…つまり、俺にハッキングをしろとでも言うのか」

ご名答



仁王がニヤリと笑うと、柳は溜め息をつく。

そんな犯罪紛いな事を頼まれても簡単に受け入れる事など出来る訳が無い。

とは思ってみても、この非常識な所で"犯罪"なんて言葉は存在しないような気がした。






「…ハァ、何を調べれば良いんだ?」


結局彼の依頼を受ける柳。

自分自身色々と気になる事はあったので、丁度良いと言えば丁度良かった。




「この学校の事と、あの放送の声の主の事じゃ」



やはり、と言わんばかりの表情で何も言わずに頷く柳。

このバトルロワイヤルの意図を知るには、まずはそこから調べる必要があった。


カタカタ…、と何やら柳は打ち込んでいる。

ハッキングなどした事の無い人には見えない。

手際よく、手早く、真実に近付く為に作動する柳の脳。








そしてついに…








「出た」




柳が手掛かりを手に入れた。

二人でニヤリと笑い合うと、柳はパソコンの画面を見つめる。



「学校名、現在地などは流石に発見できなかったが…重大な手掛かりを見つけたぞ」



柳はパソコンの画面を下へ下へとスクロールして、読み上げる。



「声の主…アイツは通称、狂魔」

「…不吉な名前じゃ」

「狂魔には仕える者が3人居る。焼魔に絞魔(コウマ)に爆魔(バクマ)」

「…なんだか…どれも良い名前とは思えんのぅ」

「何処か憎しみを感じる名前だが、3人に命名したのは狂魔だ」





と言った直後に、柳の目が見開いた。




「どうしたんじゃ?参謀」

「…狂魔、彼はこの学校の

















































テニス部部長だった…?

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