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※銀時♀注意






睡眠薬ってそんなに効果があるのかと期待半分、不安半分。
何故かは知らないけど俺のところまで酒を飲みにくるコイツの真意を知りたかった。
…とは言ってみたが。

わざわざ来るのは俺に会いに来るため、とか?
なんて思い始めたらコイツをどんどん気になって、次第に良い男に見えてくるもんだから、恋とは厄介だ。






史上最高のWinning run








(うわー、無防備)

ガキの頃はこんな寝顔だったっけ?と、銀時は声も出さずにニヤニヤと笑う。
ソファーに倒れるように寝ているのは自称獣。
何やかんやで長年の腐れ縁となる高杉だ。




「……………。」

試しに頬を指でつっついてみる。
だが起きない。
これだけ無防備ということは、狸寝入りでもないらしい。
それだけ俺の前では気を許してくれているのかと、少し嬉しくなる。

銀時は高杉を仰向けに寝転がして、じっと見つめる。
息をするたびに静かに動く体。
こんなに近くで男を感じたことはない。




「高杉…?」

「……………。」

「…晋助。」

「………………。」

「…………しーんすけ。」

「……………。」

反応はない。
それでいい。
何をしても起きない方が好都合だから。




(じゃぁ…いよいよ)

銀時は息を殺しながら、高杉の手に触れる。
酒を飲んだからか少し熱い、そして男らしく硬くて太い指の感触に思わずうっとりしてしまう。

そして次が本番。
再び息を殺し、顔を近付けた。
ふに、と唇が高杉の頬に当たる。




(うわ…なんか変態だな、俺)

少し唇で食んだり、さらに押し付けたり。
初キスを高杉の頬で楽しみながら、目の前にある唇に目がいってしまった。
さすがにここは…と思っていても、興味があるのは事実。




(じゃあ…失礼して、)

意を決して。
唇をそのまま、高杉の唇に重ねる。
あっさりと重ねられた口付けは、ひどく柔らかく、何度も重ねていたいほどだった。
街中で堂々とぶちかましているリア充どもはこんな感じなのかと学習する。

ふに、ふに、と柔らかい感触。
少し舌で舐めたり角度を変えたりと、好きなように重ねる。




「ん…………。」

「……………。」

溜め息を吐きながら、唇を離す。
さすがに起きたかな、と思ったがまだ起きてない。
無防備な高杉を見てだいぶ興奮してきたが、さすがに体まではいけない。
夜這いするのならもうちょっと気合いをいれないと。
入念に計画して、下着を豪華にしたり、とか?




「まぁ最後までできないけど、」

これからが本番の本番。
銀時は高杉の体を持ち上げようと、高杉の肩を担いだ。
そこから持ち上げようとするが、やはり成人男性を運ぶのは容易ではない。

ずるずると半分引っ張るようにして寝室へと向かう。
そして敷かれた布団に寝かせて顔を見た。




「……………。」

「……………。」

起きて、ない。




(あんだけ引っ張ったのに…)

まだ起きないとか。
そんなに睡眠薬って効果があるのか。
それとも狸寝入りなのか。

銀時は高杉の顔を見つめ、寝ているかどうかの確認をした。
あの高杉がここまでして起きないわけがない。
睡眠薬は療法を守ったとはいえ、高杉の警戒心が無くなるなんて到底思えない。
疑問と不安が混ざる中、銀時の心配を余所に、目の前の高杉は静かに寝息をたてていた。
まぁ起きないに越した事はないのだが。




「わ……。」

着物がはだけてる。
こんな近くで見たことないけど、やっぱ筋肉質なんだ。
すっげー。
上が凄いってことは、下も凄いんだろうな。
いや、今日はやらないけど。
今日は。




「まず…包帯を取るだろ?」

誰に聞くでもなく、銀時は高杉の包帯を取る。
するすると抜いて周辺にぽいっと放る。
次は着物。
帯を解き、包帯と同じように抜いて捨てる。
これでいくらか寝やすい格好になっただろう。

そして最後に顔を近付け、高杉が寝てるのを確認する。
目を閉じたままゆっくり息をする高杉。
ちょっと胸キュンしたので、再び唇を重ねて、この感触を忘れないようにする。




(睡眠薬様々だな…)

これで準備万端。
あとは、




「おやすみなさーいっ」

銀時は布団を被り、高杉に寄り添う。
そして高杉にも布団をかけて、一緒に寝ている感を出す。
今回の狙いはこれなのだ。
一緒に寝ていたら高杉はどんな勘違いをするか。
あわよくば、勘違いのまま恋を成就させてしまおうと。




「俺だけ片想いなんざ…、」

なんか…ムカつくから。
理由は簡単、高杉を俺のものにしたいだけ。

それもこれも、思わせ振りなこいつがいけない。
近寄っては離れて、近寄っては放置されて、の繰り返し。
まるで愛人のような?
不倫相手のような扱いだから、俺は気にくわない。
でも本人に直接言うタイミングは毎回逃してしまうので、結果的に強行手段。
これで一夜を共にしたと盛大に勘違いをすればいい。
こいつの性格上、責任取れと言ったら義理堅く守ってくれるはずだから。




(最低な女だな、本当)

だけど最低なら最低らしく。
高杉を手に入れる為なら、また薬で眠らせて体を繋げ、既成事実を作っても構わない。
例え高杉が情事中に起きても、お前が先に仕出かしたと言えばいいのだから。
受け身な女はこういう時に都合が良いのだ。




「それだけ…お前が好きなんだよ。」

「……………。」

「それだけは信じて…。」

「……………。」

返事はない。
当たり前だ、眠らせているのだから。

銀時は高杉の体に触れながら、ゆっくりと目を閉じる。
高杉と一緒に寝たらこういう感じなのかと、じんわりと伝わる温もりに安心してしまう。
が、途中で気付く。




(あ…………)

一夜を共にしたって設定なら、服は脱がないとダメか。

そう思い付いた銀時は、いったん起き上がり、いそいそと服を脱いで周辺に捨てていく。
下着はどうするか悩んだが、生々しさを出したいので勢いよく脱いだ。
そして高杉の着物も、ゆっくりと脱がしていく。




「ぁ……。」

着物から腕を抜いて、露になった男の体。
着物は背中の下に敷いてしまっているので抜けないが、それでもリアルになっただろう。
自分は全裸、相手は半裸。
これでいい。




(た、高杉と寝ると…)

こういう気分なんだ。
露になった男の体に寄り添って寝ると、本当に抱かれた後のような気がして。

ふんわりと香るのは、いつもの煙管のにおい。
それがやけに甘く香ってくるのだから、もう駄目である。
胸が締め付けられて寝れない。




(でも寝ないと、)

俺は情事に疲れて寝てる設定なのだから。
そう心の中で決意をすると、目を閉じてひたすら高杉の体温を感じていた。






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