嫁を駄目にする布団







「…ン………ぅ。」

「……………。」

腕の中にいる銀時が寝返りを打つ。
その振動で起きた高杉は、ゆっくりと目を開けた。




「………………。」

激しく求め合った情事を終え、甘い空気から静かな静寂に包まれた部屋。
その中で、銀時は高杉の胸板に顔を擦り寄せて寝ている。

どうやら銀時にとって、この体勢がとても落ち着くらしい。
情事の前も、高杉の着物をわざと崩して胸板に抱きついてくるのだから。




(何が良いのかわからねェが、)

本人が好きならば、嫌な感じはしない。
フワフワと胸板をくすぐる銀時の髪を指で遊びながらフゥとため息を吐いた。




「っ………ン。」

「………………。」

ビクリと反応する眉。
洩れる吐息。
それに違和感。




(こいつ…)

高杉は指を滑らせ、耳の裏や項に触れていく。
どれもこれも、銀時が情事中に喜ぶところ。
触れば触るほど敏感に反応し、次第に腰を揺らしてきた。

間違いねぇ、こいつ起きてやがる。




「銀時。」

「………………。」

「狸寝入りは可愛くねェな。」

「ン………。」

「それとも…このまま俺に寝込みを襲われるか?」

「………………。」

高杉の挑発に、銀時はピクリと反応する。
だが目は開けない。
素直なんだか頑固なんだか、やれやれと思いながらも高杉は静かに触れていく。




(まだ盛ってんのかよ、)

震える体。
小さく乱れる呼吸。
そして速い心拍数。

これでも狸寝入りを続けようとする銀時に、高杉は全身をゆっくり撫でていく。
それも触ってほしいだろう箇所ではなく、焦らすように触れるか触れないかの感覚で。
意地悪だとか後で文句を言われそうだが、そもそもこいつの狸寝入りがいけない。




「………ン…。」

「期待してんだろ。」

「っ…ぁ、」

「なら、早く目を開けろよ。」

そしたら可愛がってやってもいい。
その言葉にビクリと反応してしまい、ついに銀時は白旗を挙げたようだ。
ゆっくりと目を開け、高杉と視線を合わせる。




「意地悪…。」

「期待通りの言葉をありがとうよ。」

「んだよそれ…。」

「まだ足りねェんなら、素直に言えってことだ。」

「そ…んなんじゃなくて、俺は…っ」

「俺は?」

「た、高杉のにおいがするって思っただけで…それで…っ」

「へぇ……。」

欲求不満は全否定しながらも、銀時の主張に笑ってしまう。
それに対し、銀時はぷるぷると体を震わせた。
どちらにせよ、しきりに抱きついてくるのは俺のにおいが好きだから、というのがわかって機嫌は良かった。
においに敏感だとは知らなかったが、好きだというのならば喜んでくれてやろう。

高杉は銀時を引き寄せ、胸板に埋めた。
この体勢が好きな理由がまさかにおいだったとは。
そしてこのまま銀時の機嫌をとれば、後は素直に鳴いてくれるはず。
高杉は手をゆっくりと着物の中に滑らせて銀時をその気にさせようとした。




「…高杉、」

「まぁ確かに…布団の中なら俺の温度とにおいを感じる絶好の機会だもんなァ。」

「っ………。」

図星なのか、何も言い返してこない。
その代わり高杉の胸板に顔を埋め、男の着物をぎゅっと握ってきた。




(かわいいもんだ)

続きはこのまま布団の中で抱いてやろう。








(つまり骨抜きにさせる旦那次第)




16,10/25
[*前へ] [次へ#]



戻る

←top