仕事のち休息、ときどき熱






※沖♀注意





胃、でもないし。
腸?でもない。
まったく、子宮ってどこにあるんだか。

女子特有のこの腹の重さ。
ま、殿方にゃわからねぇとは思いますが。
結構しんどいうえに鬱陶しいんですぜ。




(うぅ……うー…)

沖田は布団の中で寝転がってみる。
どの姿勢が一番楽か、それを知りたくてゴロンゴロン動くが、未だに見つからない。

月経時の体のだるさ。
子宮の痛み。
それらを緩和するのが見つからず、仕方無くうつ伏せになったまま目を閉じる。
しかし先ほどからずっと寝ているため、寝つけようにも寝られない。




「働いてた方が良いのかも…。」

筋肉痛と同じで、じっとしてるより動いてた方が辛くないのか。
でもあまり動きたくない。
だけど暇。

これだけ時間があると、我ながら馬鹿馬鹿しいことを考えてしまう。




「はぁ……。」

何かと理由を付ければ「女子だから」と難なく休みにしてくれる。
そんな局長を持って幸せだと思う。
何故なら鬼副長なら「ふざけんな、働け」と外につまみ出される、と思うからだ。

そう考えているときも、ぐるぐると違和感のある腹部。
この休日をどうしたものか。
沖田が頭を悩ませていると、不意に足音が聞こえてきた。




「総悟。」

「…何ですか。」

「辛いか?」

「いや、そこまで…じゃないです。」

「そうか…。」

スッと障子が開く。
どこか安心したような声の主は、何やら書類やら筆を持っている。




(まさか…)

外に出れないなら事務職をやれってか。
そういうことか土方コノヤロー。
全く女をわかろうとしないんですねこのクソ真面目マヨラーは。

布団に入ったまま頬を膨らませた沖田に、なんて顔してんだ、と頭を撫でられる。
そして部屋にある机を布団の近くに持ってくると、書類や筆を置いて、土方は座って書類に取りかかった。
それを沖田は隣で見ていた。




「……土方、さん?」

「あ?」

何でもないような、いつもの感じで土方は返事をする。
ちらりと沖田を見て「さっさと寝ろ」と額を突っつかれた。




「寝たくても寝れません。
だいたい寝てる女の隣で仕事ってどういう了見でィ。」

「だったらお前がやるか?」

「結構です。」

「なら、おとなしくしてろ。」

よしよしと撫でてくる手。
頭や肩に触れられると、どこか気持ちよくて沖田は目を伏せた。

だが土方の手は書類に向かうためにすぐ離れてしまった。
そうなってしまっては寝れない。
沖田は目を開けて、仕事に向かう土方をジッと見つめた。




「……………。」

「……………。」

何をするわけでもなく、静かに時間が過ぎていく。
聞こえるのは土方が書く音。
見えるのは土方の真面目な顔。
この真剣な眼差しが好きだったりする。
なんて、本人には絶対言ってやらないけど。

知らず知らずのうちにドキドキと高鳴る鼓動。
顔を見つめてるだけなのに、仕事に向かっている土方がかっこ良く見えてしまうのだ。
沖田は手を伸ばして土方の腕を軽く掴んでみる。
すると、真剣だった眼差しがこちらに向けられた。




「んだよ…。」

「暇なんです。」

「構ってほしいなら口で言え。」

「そんなこと口が裂けても言いません。」

「はいはい。」

土方は筆を置き、沖田の手を取って指を絡ませてきた。
そして左手で書類を持って、再び仕事に向かう。




(もしかして…)

俺を心配して、なんて展開だったら腹を抱えて笑っていただろう。
だが、乙女でメルヘン思考の今の 俺にはときめいて仕方ない。

土方なりに心配してたのか。
仕事やりながら側で様子を見るつもりできたのか。
タバコもマヨネーズも持ってきてないのは俺のためなのか。
期待の連鎖が止まらない。




「土方さん…。」

「何だよ。」

「タバコ…吸いたいでしょう?」

「どうしてそう思う。」

「…………。」

だって仕事中はいつも吸ってたから。
昔それに反発したら「これを吸うのも仕事なんだよガキ」って言ったの、覚えてないんですかね。

土方のことを考えれば考えるほど腹の痛みや体のだるさなんて二の次。
今は心臓がやばい。
高鳴る胸を抑えながら、沖田はゆっくり起きあがる。




「おい、怠いならおとなしく…。」

「よっと、」

腕の下から入り込んでこんにちは。
そして向かい合うように土方の膝の上に座り、軽く口付けをした。

普段の沖田なら九割九分九厘絶対しないであろう行動に、さすがの土方も驚いている。
だが一番驚いているのは沖田自身。
口では言えないのに、大胆に行動できている。
それもこれも、この心臓の高鳴りと期待させる土方が悪い。




「…あまり誘うな。」

「誘う?」

「いや、確信犯の間違いだったな。」

「ただの受動喫煙予防でさァ。
タバコが吸いたくなったらその口塞いでやりますぜ。」

「馬鹿。」

んなこと言われたら吸いたくなんだろ。
ニヤリと笑った土方は、沖田の頬に手を添えてそっと口付けを交わす。
沖田を労っているのか、いつもよりゆっくりと舌が絡まる。




(焦れったい…)

何だか前戯で焦らされてるみたいだ。
体よりも顔が熱くて、本当に沸騰してるかのように体も震えてくる。

唇を離してしばらくお互いに見つめ合う。
本当ならすぐにでも押し倒したいのであろう。
目の奥に熱が籠もっている。
沖田が「ご奉仕しましょうか?」と聞けば「大丈夫だ」と返された。




「お前が回復したら、思う存分食ってやるよ。」

「我慢できないくせに…。」

「ナメんな。
嫁のために禁煙なんざ楽勝だ。」

「っ…その言葉、いつまで保ちますかね。」

「俺が覚えてたら、だな。」

「その俺様亭主関白がおとなしくなったら良い嫁になってあげますぜ。」

「そりゃ楽しみだ。」

クスクスと笑い合っては口付けを交わす。
そして沖田を抱き、腰や背中を撫でながら仕事に取りかかる。
そんな土方を感じながら、タバコが吸いたいだろうタイミングで再び口付ける。
沖田が心地よさに眠るまで、何度もそれを繰り返した。










16,01/08
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