昼寝優先につき、






※沖♀、後天性猫化注意




縁側で日光浴をしている生き物を発見。
近づくと耳が動き、尻尾もゆらゆらと揺れ始める。
それが可愛いと思えてしまうほど、俺は疲れているのかもしれない。




「おいこら有給民。」

「んー…。」

「そんな所で寝てたら風邪引くからな。」

「………………。」

「………………。」

「……………………………………。」

「……ったく、」

土方の存在には気付いているようだが、猫は起きる気配無し。
ならばと猫を抱き上げて風の当たらないところへ移動させる。




(あ………)

しまった。
俺の部屋に入っちまった。
まぁそれは仕事だから仕方ないとして、こいつを抱いたまま部屋に入ったら連れ込んだみたくなるだろ。
誰かに見られてなきゃ良いが…。




「総悟……。」

「……………。」

くぅくぅと寝ている沖田を見ては、土方も成す術がない。
布団にでも寝かせるかと思ったがそれは確実に手を出してしまうと急ブレーキ。
ならばこのまま仕事、なんてできるはずもない。
どうしたものかとノリツッコミを繰り返しながら、結局沖田を抱いたまま机に向かうことにした。




「………………。」

「………………。」

「………………。」

「………………。」

寝ているとはいえ、相手を気にしてしまうのは男の性。
というより抱いたまま机に向かうのはしんどい。
どの姿勢が楽か、土方は考えてみる。




(あー……いや……だが、)

それをやったら色々と壊れる。
今の仕事とか理性とか色々。
だが、まぁ、その、




「………………。」

「………………。」

結果的に、土方は沖田を正面から抱き締めた。
土方を跨ぐように座らせ、そのまま腕に閉じ込める。
内心は可愛い可愛いとデレデレしているが、今は極力顔には出さない。
こうやって触れ合える関係である事に感謝しつつ、土方は事務作業をし始めた。

カリカリとペンを走らせ、
沖田の呼吸を感じ、
外からは鳥が鳴く。




「ふぅ……。」

思わずタバコに手が伸びる。
だが今は沖田がいるため、土方は伸ばした手を引っ込めた。

一服したい。
吸ってないとやってられない。
そんな時に限って現れる猫。
つまり遠回しに禁煙しろと言われているようなものだった。




「本当に、」

可愛い猫だなお前は。
髪色に合ったその耳と尻尾はいつまで…、




「ッッッひゃあ!!!」

「!!」

ピクピク動いている獣耳。
そこに唇を寄せた途端に悲鳴が上がった。
何か悪いことをしたのかと心配になる反面、今の声が可愛すぎてやばいと盛り上がってしまう。




「お前……やってる時にも出さねぇ声だったぞ。」

「〜〜〜っっこんのマヨラー!
耳に息吹きかけてきやがって…っ」

「息吹きかけたらあんな声出すのか…。」

「…………………。」

「今はやらねぇ。
それは誓う、今はやらねぇ。」

あまりにも殺意に満ち溢れた眼差しだったため、土方は弁解する。
一方の沖田は自分の耳を撫でて必死に違和感を消していた。
それには思わず、土方もニヤニヤと笑みが溢れてしまう。




(本当にやべぇ…)

マジで可愛い声だった。
というか反応早く無かったか?
まさかの狸寝入りだったら尚更やべぇな。
総悟が可愛くてたまらない。




「素直なお前も良いな。」

「この耳と尻尾の影響ですよね?
なんとかならないんですかこの魔法。」

「猫になったお前は益々飼い慣らしてぇな。」

「嬉しくねぇうえに人の話を聞けよクソ上司。」

「聞いてる聞いてる。
まぁ猫になろうがならまいが俺にとっちゃ関係ねーよ。」

土方はそう言って沖田の首に何かを付けた。
沖田が手で触れれば、それが何かわかったらしい。
殺意と呆れとムカつきと、沖田の目は様々な色に変わった。




「どうだ。
今まで人にやってきた行いを受ける気分は。」

「俺はアンタみたいにドMじゃねぇんで。
こんなもんされても喜ばねぇですぜ。」

刀が出るか、と思えば意外や意外。
次第に目の色は落ち着き、沖田は冷静に対応する。
ここで動けばプライドが傷つくと判断したらしい。
沖田は嵌められた首輪の金具を外そうとするが、数分カチャカチャしても外れなかったため諦めた。




沖田が不機嫌な理由。
それは出先の猫の国(仮名)にて、猫をモフモフして癒されていたらいつの間にか自分の頭に耳が生えていたこと。

そして屯所に戻った後。
沖田の変貌を見た近藤や山崎、隊員たちに遊ばれ半分甘やかされ半分の扱いを受けたこと。

その影響により。
かれこれ数日間、土方の部屋付近で大人しくしていること。

更には恋仲タイム時。
隠していた尻尾が土方にバレたうえに、いつもと違う性感帯に調子も体も乱されたこと。

…など、理由は多い。




(問題ねぇらしいが、)

数週間で猫の効力は切れるという。
なんとかの恩返しより長い効力だが、期限が見えているのが唯一の救いたろう。
だが環境が変わりすぎた今の総悟のストレスはMAX。
そもそもストレス解消のための出先だったはずが、こんな珍事件に巻き込まれたからな。
そこは理解してやらねぇと。




「んー……。」

「起こして悪かったな。」

「んん。」

「しばらく寝てろ。」

沖田の頭を撫でてやれば、ゴロゴロと喉が鳴った。
ような気がする。
気分によって態度が変わるのは沖田そのもの。
猫耳や尻尾という萌えアイテムを授かろうが、中身は何も変わらない。
いつものように接していれば、ストレスフルになることはないだろう。

今の沖田に必要なのは、無駄に干渉しないこと。
土方はそう解釈した。




「……あんたも、」

「?」

「土方さんも、猫になればよかったのに。」

「2人揃って耳が生えてどうすんだ。」

「発情期になったら、たっぷり調教してやります。」

「お前の中で?」

「ぶぁーか。」

あんたの逸物なんか、俺の口で充分です。
そう言って沖田は土方の唇に吸い付いた。
優しく触れた唇からは、苛立ちは感じない。
ならばと口付けを繰り返して、沖田のやりたいようにさせる。




(なるほどな…)

舌のザラつきが滑らかになっている。
少しずつ、人間に戻っている部分があるらしい。
なら今できることは今のうちにやらねぇと。




「……総悟、」

「ん……?」

「今夜イくときニャアって鳴…ッッッッぐふ!!!!」

「…いつか言うと思ってましたよこの変態。」

鳩尾に1発。
冷めた目で拳を構える沖田は「今すぐ死んでくれ」と言っている。
だがそこで諦めないのが男心。
土方は沖田を抱き締めて交渉する。




「暑い苦しいヤメロ。」

「総悟。」

「…今だけのくせに。」

「………………。」

「どうせコレが無くなったら扱いが変わるんでしょう?
本当男ってのは外見ばかりの物言いで、」

「……普段から頼めば鳴いてくれるってことか?」

「どこに食いついてんだクソマヨラー。
んなの事前審査で落ちるに決まってんだろ。」

「そうか、鳴いてくれんだな。」

「目をキラキラさせんな土方コノヤロー。」

沖田の声はトゲトケしつつも、体は大人しいまま。
これは押せると判断した土方は、沖田を抱き締めたまま後ろに倒れた。




「昼寝に付き合っても好感度は上がりませんぜ。」

「備えだ備え。
今夜は長くなりそうだからな。」

「1人でワクワクしないでくだせぇ。」

そう言いつつ、沖田は土方の横に移動する。
仕事を放置して猫と昼寝。
こんなにも仕事にルーズになってしまったのはこの猫の影響か。
土方は軽く目を閉じて沖田の行動を感じる。




「……………。」

自分が寝やすいようモゾモゾと動く沖田の体。
太ももに絡まる細い感触は尻尾だろう。
腕には沖田の頬が寄せられる。
これで完了、と思いきや。

突然襟元を力強く引かれた。




「っ……なん、」

「アンタは横向き。」

で、枕代わりの上着をセットして終わり。
沖田は土方の上着を脱がせて雑に丸めて頭の下に敷く。
そして土方の胸板に潜り込み、顔を寄せれば満足らしい。

土方に横抱きされながら寝たい。
それが猫様の御所望のようだ。
これには飼い主( )もデレデレがMAXである。




「総悟……。」

「ちゃんと、『待て』ができたら。」

「?」

「ニャアって鳴いてやりますぜ。」

「っ、」

「それまで…首輪はつけたままにします。」

だから夜まで発情しないでくださいね。
今の俺は眠いんで。

そう告げて、顔を上げた沖田は土方の鎖骨や首筋、顎に唇と、順番に吸い付いた。
そして素早く土方の胸へ戻り、深い呼吸を始める。
一方の土方は脳が一時停止と再生を繰り返し、まともな思考になったのは沖田が寝た後だった。




(この女王猫が……)

勝手に誘って遊んで放置とは。
それがいつも危ういと何度も言っただろうが。
優位に遊んでいても所詮は未成年の猫。
本気の雄猫がどんなもんか、あとでじっくり教えてやらねぇと。

だが今は、












「……………。」

「……スー……スー…。」

「……………。」

「…スー………。」

「…………………ふー…。」

ダメだ。
総悟が可愛すぎて寝れねぇ。





21,07/13
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