※銀♀、社会人パロ注意




かつての同級生がスナックで働き、そこに遭遇したら誰だって驚くだろう。
久しぶりの再会は目が合ってお互い一時停止。
しばらくしてからお互いに「あぁお前か」という流れでこのスナックを利用したのが始まり。

そして今夜も。
週1〜2で通うようになって油断していたのか、えらい高い焼酎の瓶を開けられた。




「あ"ぁ"ーっ
何じゃこの胃液に染みる酒は…っっ」

「勝手に開けておいてバテるなんざキャバ嬢失格だな。」

「キャバ嬢言うなっ」

お猪口に注がれた酒を飲み、銀時は眉間にしわを寄せる。
それを隣で見てはせせら笑い、高杉も酒を進めた。




「ガキの舌には刺激が強すぎたか。」

高杉はボソリと呟いて隣で唸る銀時を見る。
アルコール度に百面相になる銀時は面白いが仕方ない、逃げ道を作ってやろう。
高杉はアルコール度の低いシャンパンを頼み、銀時へとわたす。

グラスを増やしたら駆け引きの始まり。
暗に意味したものを理解したのか、銀時はパァッと笑顔になり高杉に甘える。




「なになに?
こんなに大盤振る舞いするなんて、お客さん今日も稼いできたの〜?」

「…どこの情報か知らねェが、今時のキャバ嬢はそんなんじゃねぇだろ。」

「んだよ、せっかくリクエストに答えたってのに。」

「テメェが古すぎるだけだ。」

「あんま下手なこと言うと、代金倍にすっからな。」

「その時はこの場で抱いてやるよ。」

「うわ何その冗談。
本当に今日はテンション高杉〜。」

酒が入って気持ちよくなったのか、銀時がケラケラと笑い続ける。
今ならいけるかもしれない。
そう思った高杉は銀時の肩を抱き、一気に顔を近付けた。

だがこの女は甘くない。




(…さすが、か)

このテンションならと、口付けてしまおうと思ったのだが。
その前に銀時が前へ出て、ぎゅっと抱きついてきた。

客のあしらい方もお手のもの。
しばらくして体を離すと、銀時は勝ち誇った顔で高杉を見つめる。
その無邪気な笑顔に俺は弱い。




「昔は男気だけの小娘だったのになァ。」

「綺麗な女になったって?」

「自分で言うなよ。」

高杉はクツクツと笑い、銀時から手を離す。
再会してからこんな調子だが、昔に戻ったようで楽しく酒が飲めているから良い。
学生の頃は同じグループでずっと一緒にいたが何の進展も無いまま卒業。
連絡がつかなくなったと思ったらこんなふざけた再会と、つくづく腐れ縁の関係である。

その銀時は昔の面影を残しながらも、見た目も仕草も女らしくなっていた。
さぞ多くの男を惑わし、貢がせているのだろうと思ったが、未だに恋愛未経験と予想外の答え。
「付き合うなら俺よりもドSで大人の男」「それなら火遊びでも毎晩楽しそう」と、憧れを持つ少女のようにキラキラした目で言われたら、俺の名にかけて落としてみようとなるだろう。
常連客への誘い文句だったかもしれないが、男を誘惑すると痛い目を見るんだぞと教えるのも良い。
最初は確か、そんな軽はずみだった。




「つくづく予想外な女だよ、テメェは…。」

その強いガードを暴くほどに、深みに嵌まっていく。
だが攻めすぎるとお決まりのように泣いて逃げられてしまう。
絶妙な距離感をどう攻略するか。




「そういや、そのイメチェンはどうだ。」

「あぁこのドレス?
んー…ちょっとぴったり過ぎてドカ食いできないんだけど。」

「別に、少し腹が出たぐらい気にしねぇよ。」

「女は気にすんのっ
普段は着物だから気にしてなかったけど、俺だって色々と出てるんだから。」

「女は色々出てた方が、色っぽくて良いんだよ。」

「でもさぁ…。」

「俺しか見てねぇから心配すんな。」

前のテーブルに置いてある銀時用のクッキーを取り、高杉は銀時の口に運ぶ。
ドレスおよび口説きの効果はあったらしい。
赤い顔で眉を寄せながらも、銀時はクッキーを食べ始めた。

ドレスは前回、銀時にプレゼントしたもの。
普段スナックで働く際は清楚な着物なのだが、駆け引きを楽しむのであれば挑発的な姿も良いだろう。
女らしい体を見せつけるような、あえて柄や装飾の少ないベージュのドレス。
まるで全裸のようで、高杉の興奮を煽っていた。




「高杉って本当、女の扱いが慣れてるよね。
昔から人気だけは高かったくせに彼女は作らないっていう不思議キャラっつーの?」

「不思議キャラはお前だ。
女っ気がないくせして男女共に人気だったじゃねぇか。」

照れ隠しのように話す銀時に対し、高杉は女のためにとパフェを頼む。
すると銀時の顔が一段と輝き、高杉に礼を言う前にパフェのクリームを頬張った。




「ん〜〜っっ
やっぱ俺様何様高杉様はわかってる!
他の客だったらここまで気配りしないもん!」

「んだそりゃぁ。
テメェの客はどんな奴がいるんだよ。」

「なんか全体的にMっぽい感じ?
俺のドSとツッコミが追い付かないぐらいで大変なんだよな。」

「なら良かったじゃねぇか。
これで晴れて女王様だ。」

「嬉しくねぇっつーの!
俺の花の時間が無駄だろうが!!」

「確か客の中に俺の同僚もいたと思うが…あれもMなのか。」

「黒眼鏡の兄ちゃん?
アレは、なんか、うん、仕事の愚痴が多いだけだね。」

「愚痴?」

「高杉はもうちょっと周りに気配りしたら?」

上機嫌のままパフェを食べ続ける銀時に対し、高杉は眉を寄せて考える。
愚痴など一切言わない同僚だと思ったが、そこは人間。
積もるものは積もるらしい。
しかもそいつは自分よりもスナックの古い常連客ゆえ、銀時と懇意にしているのを想像すると快くは思わない。

高杉はどす黒い思考に陥るが、隣の銀時があまりにも美味しそうにパフェを食べるので、次第に嫉妬はどこかへ行ってしまった。
見ていて飽きないのが、人を引き付け、愛される力か。
これが銀時の不思議な魅力である




「あ、また悪いこと考えて。」

「んなことはねぇよ。」

「人生まだこれからなんだから、そんなイライラしてたら勿体ないでしょ。」

甘味を取らないからイライラするんだよと、銀時は空になったパフェのグラスとスプーンを置く。
そして高杉が頼んだシャンパンに口をつけた。
その際、口の端から溢れた雫が、首筋を通って鎖骨や胸元を通っていく。




(これは…1本取られた)

口説きで優勢になったと思ったが油断した。
思わず目で追ってしまったではないか。
そして銀時は『ほらどうよ?』と計画通りという目をしていた。
危うく貪りそうな誘惑に、高杉の体は熱くなる。




「他の客にも“そんなこと”してんのか。」

「いーや?
“こんなこと”をするのは高杉だけだって。」

だよねー!?と銀時が大声を出せば、スナックのカウンターにいた店主が手をひらひらと振ってくる。
それを見た銀時は「ね、高杉だけでしょ?」「だって高杉は上級者だもん」と笑ってくる。

これでは集団で試されているようなもの。
遊ばれているようで気にくわないが、不思議と気分がいい。
この難攻不落な女を今夜こそ攻め落とす。
それにはどうしたらいいかと、あの手この手の強行手段を考えていく。




「あ、今度はやらしー顔してる。」

「これでも昔からポーカーフェイスのつもりなんだが、」

「そりゃあ昔馴染みだから。
高杉の心ぐらい読めるって。」

「なら下手に考えない方が良いって事だよなァ。」

羞恥プレイや青姦を考えていた脳を止め、銀時に狙いを定める。
獲物を狙う眼光、それに逃げない銀時。
ニヤリと笑った高杉は本能のまま銀時の手を引き、包み込むように抱き締めた。
それに対し銀時は抵抗せず、静かに高杉の胸へ収まる。




「…なに、甘えたいの?」

「そう言ったらどうする。」

「まぁ聞くよ、別料金だけど。」

「抜け目の無ぇ奴だな。」

「職業病かな?」

「さすがは女王様だ。」

「ん、ありがと。」

笑いながら銀時が大人しくしているのは、この後の展開が気になるという余裕。
いつも俺が仕掛けては銀時に避けられ逃げられる。
そして銀時が攻めてきたら、今度は俺が逃げる番。
素直に受け止められないのは、照れ臭いからかそれとも。




(お互いに不器用だと、厄介なもんだ)

本能は銀時が欲しいと叫ぶのに、理性がまだ駆け引きを楽しみたいと言う。
思うように上手くいかない。
だが今夜は銀時を捕まえられたのだから、本能が勝ったらしい。

このままいけるか…。




「銀時。」

「ん…?」

一度体を離し、銀時と見つめ合う。
大きな赤い目に、ぷるりと輝く唇。
今すぐ無理矢理にでも貪ってしまいたいが、高杉はゆっくりと、銀時と見つめ合いながら顔を近付けた。
これから何をするのか、わからせるようにゆっくりと。
すると銀時はそのまま目を閉じ、静かに高杉の唇を受け入れた。

重ねただけの可愛い口付け。
だが2人にとっては大きな進歩になっていた。




「…………。」

「…………。」

「…………奪われちゃった。」

俺のはじめて。

ちゅ、と唇を吸って顔を離すと、少しだけうっとりとした視線。
そこから恥ずかしそうに笑い、銀時は高杉の体に抱きついた。

街の灯りはポツリポツリと消え始める頃。
既に店には誰もいなくなり、店主が置いていった店の鍵が、カウンターに置かれていた。




(愛されんのも大概にしろ…)

お手並み拝見、ということだろう。
お前に銀時を奪う度胸があるのかと、この店そのものが挑発してくる。
もどかしい愛は夢か現実か。
愛や夢とは何だ。
確かめるように、高杉は女を抱き締める腕を強くした。




「高杉って…案外優しいんだね。」

「優しい?」

「さっきのキスとか、初めての俺に優しくしたんでしょ。」

「……………。」

「初めてでも…その、高杉の技量がわかった……。」

「……………。」

「えっ…と………、」

しどろもどろな言葉に、高杉は銀時の頭を撫でて落ち着かせる。
おそらく火遊びの相手なら合格。
このまま抱いてほしいと言いたいのだろうが、俺のドSは理性的にストップをかけていた。




(おちょくられたもんだな)

このまま抱いたら銀時の計画通り。
お前はこんなものかと、図に乗ってまた逃げられる。
テメェの調子で話を進ませねぇよ。




「銀時、1つ勝負に付き合え。」

「勝負?」

何の話だろうと目を丸くする銀時に対し、高杉は近くのサイドボードに置いてあったトランプを持って切り始める。

提案したのはババ抜き。
勝った者が、シャンパングラスに残った最後の一口を飲めるというもの。
突然すぎる挑戦に、さすがの銀時も疑問はあるようだが、数秒ほど考えて了承した。




「2人でババ抜きとか、すぐ終わっちゃうじゃん。」

「それが良いだろ。
互いに長期戦タイプじゃねェんだからな。」

「そりゃそうだけど…。」

「あとこれは曰く付きでなァ。
相手の心が読めるって代物らしいぜ。」

「…………高杉くんって、オカルト好きだっけ?」

「夢があるなら乗っかるだろ。」

「ふーん。」

「ほら、お前も切れよ。」

「ん…。」

銀時は腑に落ちない顔でトランプを切り始める。
そしてぶっきらぼうにカードを配り、自分の手持ちを確認して同じものを捨てていく。

酒が終われば店仕舞い、それが夜の街のルール。
銀時がわざと残したシャンパンは、高杉との時間を長くするための細工。
それを賭けようと持ちかけた。
しかし銀時は、高杉が早く帰りたがっていると解釈したらしい。
ムッと膨れる顔がその証拠。




「…なに笑ってんの。」

「いや、」

この単細胞は昔から変わってない。
それが可愛いと思いながら手持ちを減らしていくと、お互いのカードが2枚と3枚になっていた。




「なにこのトランプ、よく切れてないじゃん。
秒殺だよこんなん。」

「…涼しい顔してババ引いた奴が何言ってんだ。」

「うっせぇ!
今に見てろコノヤローっ」

ついに1枚と2枚になった時。
2枚のトランプを何度も切っている銀時に、高杉はニヤニヤと笑いながら待つ。

そして勢いよく出されたトランプの柄。
銀時も女優張りの演技(笑)で勝つ自信があるのか、挑発の笑みで高杉を見つめる。
これは銀時が勝った場合、多額の代金を請求されるに違いない。
相変わらず、抜け目のない女だ。




「……………。」

「……………。」

じっくりと見つめ合い、
カードを交互に持ち、
銀時の顔色を伺う。
銀時が洩らす吐息を感じながら、高杉は口元をペロリと舐めた。




(覚悟しな)

止められねぇが、優しくしてやる。




「あぁーーっっ」

「クックッ…。」

選んだトランプを取った瞬間。
高杉はペアになったカードを机上に放り、銀時は項垂れた。
手元に残ったジョーカーを、銀時は恨めしそうに見つめる。




「えぇー!!
ちょっと、えぇえーっっ?!」

「どうした、女王様?」

「ちょ、それ今言うこと?!
ムカつくー!!
高杉のくせにーっっ」

「お前の演技力は小学生以下ってことだ。
素直に認めろ。」

「この極悪エロ大魔人ー!!!」

「最後の一言は余計だ。」

負けを認めようとしない銀時に、高杉は笑いが止まらず腹を抱えた。
どんな小さな勝負でも、勝った時の喜びは大きい。
それも、愛される女王様に勝ったのだから。
これで舞台は整った。

笑いも収まった頃。
じゃあコレは貰っていくと、高杉はシャンパングラスを持つ。
そしてぐっと一気に口に含み、未だにジョーカーを睨み付ける銀時を引き寄せた。




「ぇ……っ」

引き寄せた瞬間にグラスを置き、銀時の唇を奪う。
そしてシャンパンを口移しに、少しずつ注ぎこんだ。
ジョーカーは銀時の手からはらりと落ち、代わりに高杉のシャツをきつく握る。




(ここをもっと知り尽くしてェ…)

銀時の気遣いを利用したのも、カードの裏側が見えるよう反射ができる指輪を嵌めていたのも、そして急に攻めた不意打ちも。
全ては銀時を落とすための小細工。
我ながら汚いやり方とは思うが、それで銀時の予想を越える一撃がかませるなら構わない。
注がれたシャンパンを少しずつ飲み込む銀時に、高杉の愛しさが積もっていく。




「ん…ふ…ぅ……んン…。」

「…銀時、」

「ぁ…っ」

「顎は引かず…そうだ、そのまま。」

「んん……。」

初々しい反応を見せる銀時に、高杉はゆっくりと舌を絡ませる。
これがお前の望んだものだと教え込むように。

次第に銀時の舌が動きを合わせるようになり、高杉の首へ腕をまわす。
目を開ければ、先程よりも快感に溺れる赤い目。
頬を赤くさせてもっと欲しいと言わんばかりの眼差しに、高杉は銀時をソファに押し倒して逃げ場を無くした。




「はぁ…はぁ……ぁん…。」

「銀時…。」

「ぁ…っ」

深く絡ませた口付けで、心臓は高鳴り、体は熱く火照る。
既に興奮している下半身を銀時に擦り付けた。
我慢できないと、口にしなくても通じたらしい。
銀時も火照った体を擦り寄せて、高杉の腰に足を絡ませた。




「ン……これが…火遊び?」

「それ以上だなァ…。
気持ちよく声を出せよ、銀時。」

「ぁ……っ
もう、俺ばっかり…。」

「俺がそうしてぇんだよ。」

「だめ……晋助も気持ちよくなるの。」

銀時は高杉の頬を撫で、合間合間に口付ける。
お互いが気持ちよくなるよう施す心配りの口付けに、高杉の思考もとろとろと甘くなっていく。
散らばるトランプを余所に、言葉で攻め、唇で攻め、蕩けきったところで優しく愛撫をしながら脱がしていく。

早く早くと先を望む体。
少し汗ばみしっとりした肌を知り尽くしたい。
合間の口付けでは、銀時から「もっと」とせがむ小さな声。




「愛が俺で、夢がテメェか…。」

学生の頃も、欲に乱れる今も、偽物の銀時であろうと構わない。
全てをさらけ出せば冷静でいられなくなる。
夢があるなら、乗っかるだけだ。




「あぁん……しんすけ…。」

「やめろっつっても止まらねェから安心しな。」

「あ……っ」

「これからお前を、ドMの女にしてやる。」

「ン……なら、晋助を頂戴…。」

「あぁ、テメェを寄越したらな。」










18,08/03


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