※警察×高校生パロ






「ようおひめサマ。
元気なのは良いが、そっから飛び降りたら痛い目合うぞ。」

「お姫様は余計ですぜ。
好き勝手できねぇなら俺から行動するまでです。」

「なら朝食とってからな。」

「…何でアンタはこう、タイミングが良すぎるんですか。」

「それも仕事のうちだ。」

何事もないように話しかけてくる土方。
それに対し、沖田は腑に落ちないという顔で、窓にもたれ掛かっていた。




「年頃の学生が朝飯を抜くんじゃねぇよ。」

「……………。」

「腹が減ったらなんちゃらってやつだ。」

「…焼きたてのパンじゃねぇと食いませんから。」

「そう言うと思ってさっき焼いてもらった。」

土方は袋に入ったパンを見せつけて、沖田を呼び止める。
離れていてもわかる芳ばしいにおい。
誘惑に負けた沖田は渋々窓を閉め、土方が待つテーブルへと歩いた。




「今日我慢すりゃまた学校に行けるんだ。
あと数時間の辛抱じゃねぇか。」

「別に、学校に行きたくて飛び降りようとしたんじゃありやせん。」

「じゃあ何で。」

「それは秘密です。」

ホテル常備の紅茶とコーヒーを入れながら、沖田は膨れっ面で答える。
そもそもの話は、沖田が電車で痴漢にあったことから始まる。
まさか男の俺が、と思ったが。
痴漢被害の8割は女性で残りは男性と、男であっても被害者になるんだと学校で教わった気がする。
が、気にくわない。

確かに昔から『可愛い系』として育ってきたが、よりにもよって悪趣味な野郎に尻や股間を触られようとは。
一度は見逃したものの、二回、三回になると我慢の限界。
教師や警備員に相談したら、警察が見張りに付いてくれた、のは良いのだが。
それが近所の顔見知りだったらテンションも格段に落ちるだろう。
デリケートな問題を知人に助けてもらうとは。
そして更にホテルに監禁(保護)されてしまうとは。




「それにしても、今回は無事に全員捕まって良かったな。」

「まさか共犯者があんなにいるとは思いませんでした。」

「男女含め6人か、なかなかにモテるじゃねぇか。」

「やめてくだせぇ。」

1人による痴漢であればそいつを捕まえるだけで良かったのだが。
土方の見張りによって捕まえた若い男の携帯から、この痴漢を手助け・実行するような複数犯のやり取りが発見されてしまった。
そこから始まった土方による保護生活。
自宅ではなくホテルを借りて沖田を保護、学校は土方の監視の元で行ける日と行けない日があった。
そんな日々を過ごし1週間、ようやく犯人全員の逮捕ができたと報告を受け、明日から自由の身になれる。




(昔から嫌なことばっか見られちまって…)

土方のことは小さい頃から知っている。
遊んだ記憶はそこまで無いが、帰り道が一緒だったり買い物でバッタリ出くわしたり、近所に住んでいると行動範囲が似てくるのが運の尽きか。
買い食いしては止められ、彼女を散歩プレイでもしようかと思ったら発見され、もっと言えば幼稚園のときに犬が怖くて大泣きしたところを保護された記憶も朧気にある。
沖田にとって土方は、自分の弱味や趣味がことごとくバレてしまう嫌な奴だった。

しかし土方が警察官として働き始めてからは滅多に会えなくなり、たまに見かけても疲れきっている顔なので話しかけづらい雰囲気だった。
昔より関係が疎遠になったなと思い返す日が多くなっていた時、今回の事件で再び繋がるという、これはこれで不思議な縁だと思う。




「土方さんとは…昔から嫌というほど出くわしてましたね。」

「俺が行くところにお前がいるからな。」

「でも土方さんがケーサツになってからはそれもパッタリ無くなって。」

「なんだ、寂しかったか?」

「勿論。
宿題を教えてくれるお兄さんがいなくなって、勉強が嫌になりやしたね。」

「お前は小学生の時から俺にあれこれ聞きやがったな。
そのうち授業料を取るぞ。」

「高校生の財布事情は儚いんで今は勘弁してくだせェ。」

「総悟が二十歳になったら一緒に飲もうって話だ。」

「色々と塵が積もってるようで何よりです。」

「俺の年になりゃわかる。
今も仕事中って考えるだけで疲れるさ。」

「ならこれでガキのお守りから外れるってワケですね。
おめでとうございやす。」

「お、意外と年上を敬う心でも持ってたんだな。」

「俺を誰だと思ってるんですか。
夜中も隣でゴソゴソ仕事されちゃ、クレームもつけたくなりやす。」

「そのわりには爆睡だったろ。」

「寝る以外やることがなかったんで。」

軽い話をしながら食事を続ける。
土方の持っていたツナマヨパンを、マヨが大量発生する前に一口もらう。
そして土方の口に、持っていたブルーベリースコーンを詰め込んで食べさせた。
なんて平和な朝なんだろう。




「ストレスのせいで顔にニキビとかできちまったし。
俺はやっぱ監禁する側が良いですね。」

知人の野郎と同じホテルの部屋で一週間。
土方は主にソファで仕事と睡眠、沖田は寝室で1日を過ごす引きこもり生活、それなりに自由な時間ではあったが自由すぎて不自由だった。
やはり日々には何かしらのストレスがあった方が良いらしい。
土方のことばかりを考えてしまうストレス以外なら、何でも。




(俺が俺でなくなっちまう…)

土方と接していくうちに、幼い頃のようにまた甘えたい願望が出てきてしまった。
監禁されていながらも、守られている感覚。
構ってほしいからイタズラを仕掛けるような、本当に幼い心情が目覚めてきたのだ。
これを覚醒させてしまうと、変な気持ちが芽生えて大惨事になる。
だが土方も土方で悪いところはあるのだ。

朝食を終えた土方はコーヒーを飲む。
嫌がらせにと少し多目に砂糖を入れたが、特に文句も言わず飲み続ける。
これは大層お疲れなんだなと、沖田はミルクを追加で入れては土方を観察していた。




「だいぶお疲れですね。」

「まぁ今日のお守りが終わればようやく休みだからな。」

「土方さん、眠いでしょう?」

「それなり。」

「もう監禁しなくていいんですから、ベッドで寝たらどうです?」

「なんだ、誘ってんのか。」

「幻聴が聞こえてますぜ。
早く寝てくだせェ。」

「お前…そんな可愛い顔だったか?」

「幻覚も見え始めてますぜ。
とっとと寝ろケーサツ。」

どこか遠くを見つめる土方の腕を引っ張り、ベッドへと押し倒す。
朝食や締めのコーヒーは終わっている。
なら爆睡でもして牛になっちまえ土方と、うつ伏せに寝ている土方の上に、沖田は乗っかった。




「ん……重い、」

「どーです?
俺も立派に育ったでしょう? 」

土方の腰あたりに座り、大きな男の背中に触れる。
すると手が熱くなり、体や顔までが熱くなった。
今まで意識したことは無かったが、土方の男らしい体に触れて喜んでいる自分がいる。

土方のシャツを上げて、直に触れば更に高鳴る鼓動。
この背中に爪痕を残した女は何人いるのか、沖田が更にシャツを上げようとすると、土方の手がそれを止めた。




(土方さんの手…)

大きくて、指先は乾燥してて、ゴツゴツしてる。
柔らかい俺の手とはまるで違う。
はたまた痴漢をしてきた野郎の骨張った手とも違う。
あの時、この指で触られたら…。




「あ…。」

やべ、思い付きで変な妄想しちまった。
そういや最近、監視されててご無沙汰だったから。
若いってのもわかりやすくて罪だ。

沖田は土方の背中に抱きつき、もとい乗っかり、耳元で名前を呼んだ。
そして囁く。
『明日、電車の中で痴漢プレイでもしましょ』と。




「…………はぁ、」

「ダメですか?」

「お前は昔から…変な趣味に走りやがって。」

土方は振り返り、沖田の顔を伺う。
その際、土方の頬に軽く唇がぶつかってしまったのはラッキーだったかもしれない。
沖田がニヤニヤしていると、不意に土方が寝転がってきた。
そのためお互いに向かい合うように寝転がる体勢になる。




「俺に首輪をつけて散歩させるんじゃねぇだろうな。」

「首輪なんてそんな昔の話ですぜ。
今は痴漢に興味がありやす。」

「警察に泣きついた被害者がよく言うぜ。」

「だってあの人、触り方があざといだけで全然気持ちよくなかったんですよ。
そんなストレスだけの痴漢は犯罪者ですって。」

「お前の中のルールがどうなってんのか一生理解できねぇよ。」

「でも土方さんの手なら…気持ちよくなれそうかなって。」

「欲求不満か。」

「ハメる側ですぜ?
学生の処女を差し出されたら、男にとってご褒美じゃないですか。」

「自分で言っちまうところがなぁ…。」

「………ダメですか?」

「………………。」

土方のシャツを握り、困った顔をして見つめる。
今はすぐ泣けないが、昔はこの顔をすれば目がうるうるして子役並みの演技ができるほどだった。
しかし土方を悩ませるぐらいの効果はあったらしい。
沈黙がその証拠。




(知ってるんですよ…俺)

この一週間、俺の名前を呼んで1人でしてたこと。
同時に興味がわいてきた。
女を喜ばせる土方さんのテクニックがどんなものか。




「…何回か慣らさねぇとお前が辛いんだからな。」

「なら今すぐにでもやりましょ。」

「発情期か。」

「否定はしません。」

話しながらじりじり近付く唇。
発情して欲しくなった沖田は、一気に顔を寄せて唇を奪った。
くっつけただけの唇。
それをフォローするように、土方の手が両頬を挟み、少し確度を変えて重ねてきた。
これが大人の口付け。
甘いコーヒーの味が混ざるので、これが現実なんだと理解する。




「……総悟、」

「ん…?」

「あんまり余裕もねぇが…どうする。」

「そりゃもちろん。」

続きを全裸待機で。
お互いにはち切れそうなんだし、俺はAV女優張りに乱れてみせます。
だから、気持ちよくしてください。




「あぁそうかい。」

「んん……っ」

「ならおひめサマがドSに戻らないうちに、ドMに叩きのめしてやるよ。」

「ぁ…っ」

大きくて堅い手のひらが、沖田の体全体を撫でてくる。
その際も唇や耳、首への口付けは忘れず。
体全体に走るゾワゾワ感に首をのけ反らせると、喉元を吸われた。

大きな手に一喜一憂する体。
これなら理性を飛ばして乱れてもいいだろう。
初体験が楽しめそうだと、沖田は頬を赤くさせながら土方に抱きついた。




「俺は…一度火が点いたら面倒くさくなりますぜ。」

「んなのお互い様だろ。」

真剣な話は後だ、と土方にまた唇を奪われる。
制服を脱いでしまえば地位も名誉も関係ない、窮屈な部屋の中で唯一自由になれる方法であればそれに乗っかるまでの話。
だって俺は土方さんのことが、





razy





18,08/16


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