※沖♀注意
(銀♀と妹も参戦)




初めて女子会なるものに対面した。
が、噂通り生々しい。




『そうなったら神楽はどうするよ。』

『そうアルな…、
まぁ手っ取り早く押し倒して乗っかれば良いネ。』

『だってよ、沖田くん。』

『そんな直接的な話になるなんざ。
どう育ったら援交に手を出しちまうのか、』

『黙れドS。
援交じゃないって何回言えばわかるアルか。』

『そもそも沖田くんが睡眠薬で眠らせて〜なんて言うから。
俺もてっきり寝込みを襲うのかと。』

『まぁちょっと語弊がありましたね…。』

モゴモゴした沖田の喋り方。
それに対し、神楽や銀時の冷静な声が響く。
そして同じ部屋に寝かされる土方と、土方の隣に寝る定春。
更にその先には山崎も寝ていて、一種の拘束状態だった。




(いや違うな…)

山崎は気絶させられた。
俺が屯所内の女子会に巻き込まれてると、助け船を出そうとした矢先、押し掛け2人による打撃で気を失ったのだ。
そして俺はその少し前に変な酒を呑まされた。
「男なら一気に飲めよ」「彼女に良いとこ見せるアル」と唆されたらコレだ。
目的はどうであれ、もう二度と万事屋を信用しねぇ。




「………………。」

土方は浅く呼吸を繰り返し、狸寝入りを続ける。
それは数時間前、銀時と神楽が屯所に押し掛けてきた事から始まった。
普段なら帰れの一点張りだったが、沖田に用事があると顔パスで入ってきたのだ。
そして屯所の一室で始まった女子会。
それに土方は付き添いとして呼ばれ、変な酒を飲まされ、意識が戻ったら近くで女子会が開かれていた、と現状に至る。
自分の不甲斐なさに今すぐにでも起きてやろうと思ったが、今は寝ているフリを続けなければいけない。
何故なら、お悩み解決女子会(仮)で沖田の本音がチラホラと出ているからだ。

常にポーカーフェイスだし、弱音を吐かないし、滅多に素直になることもない。
付き合いが始まった時から何ら変わらない温度。
ただ体つきが女っぽくなってきたのが成長の証だが、最近は更に素っ気ないというか、付き合いが悪くなったような気がする。
そんな沖田の素直さがタダで聞ける。
なら酒で眠らされた設定に付き合おうじゃねぇか。
と意気込んだのは良いものの、沖田の話よりも他2人の放送禁止用語が飛び交っていて脳内処理ができなくなってきた。




『さては沖田くん、マヨラーの技量に欲求不満かね。』

『あー…でも一理あります。』

『身長のわりに短いアルか?』

『早漏とか?』

『もしかして(ピー)とか?』

『まさかのまさかで(ピー)が(ピー)とか、』

『あ、個人的にはムダ毛処理してないとか最悪ネ。』

『毛はなぁ…ある程度なら別に良いけど。
どこぞのゴリラみたくケツ毛ボーボーは無理なんだよね。』

『銀ちゃんの旦那も良い年だけど大丈夫アルか?』

『なんかエチケット的なところは気にしてるらしいよ?
やってる時に違和感が無いから問題無いし。』

『へー、意外アルな。』

『沖田くんもそういう細かい悩み?』

『あ、いえ、その…。
モノとか技量に関しての文句は無いんですが…。』

『が?』

『………………。』

黙る沖田に部屋が緊張に包まれる。
対して土方は随分な言われように心の中で泣いていた。
しかしこれは女の目線というものを学べたんだと、色々とポジティブに考えることにする。
そうしないと心が持たない。




(俺との情事に関しては不満が無ぇのか、)

そこは良かった。
なら何が駄目なんだ。




『……………。』

『おいサド、早く言った方が楽になるアルヨ。』

『そうそう。
こういうのは共有することで解決するんだし。』

『…………あの、』

『んー?』

『俺の場合…やった後の話になるんですけど、』

『後?』

『その、やった後って、どんな空気になりますか…?』

万事屋2人が頭上にはてなマークの中、土方は即座に事後を思い返す。
確かつい最近やったのは一週間前。
風呂に入った後、自然な流れで触ってたらそうなった。
そして事後は…特に問題無かった気がするが。




『やった後?』

『……………。』

『んー、私はいつの間にか寝てるアル。
それか適当な話をして、結局寝オチみたいな流れネ。』

『若いもんはそうだよなー。
俺なんて何ラウンドもするから、最終的に寝たのか気絶したのかわからねーし。』

『昨日は何ラウンドアルか。』

『んーとね…、
7、いや……じゅう…何回だ?』

『じゅ、』

『いやでも昨日は酒が入って上々だったらしくて。
脱がしながら触ってあげたり、風呂場で洗って掃除したり、そこで3回ぐらい(ピー)で(ピー)ちゃったかな?
相変わらずの(ピー)で(ピー)だから(ピー)は凄い気持ち良くなって、一段落して(ピー)かと思ったらずーっと(ピー)ったり(ピー)したりいつの間にか夜が明けてたなぁ。
そっから、』

『……………。』

『……………。』

『……………。』

『…………………………。』

『…………………………。』

『…あれ、なんか俺スベった?』

『…いや、だいぶ経験を積まれているんだなと。』

『銀ちゃんがド淫乱になったのは旦那のおかげアルな。
仕込まれすぎヨ。』

『そうかな〜?
大人女子はこれが普通だと思うけど。』

『10代の普通と、20代(一歩手前)の普通と、30代の普通は違うものネ。』

『オイコラ誰が30代だ。
つか俺の話は良いから大事なのは沖田くんの話だって!
なになに?
そこの堅物マヨラーとの事後がマヨネーズまみれだって?』

『まぁ……俺の勘違いかもしれやせんが、』

沖田は神楽に差し出された煎餅を頬張りつつ、緑茶を飲んで一息入れる。
一方の土方は同年代の女性論に頭を打ち付けられすぎて気絶しそうになっていた。




(あいつがそんな、)

いや、というよりあの糖分馬鹿をそんな風にした相手が凄ぇなと感心する。
もはや下僕じゃねぇか。
普段はツンツンで女らしくもない奴だが、そんな奴を飼い慣らす旦那とやらに色々と教わりたい。
機会があれば。

耳を澄ましながら寝たフリを続ける土方。
その近くで沖田は煎餅を食べては緑茶を飲んでを繰り返す。
若干やけ食いになってきたのは心配だが、そろそろ沖田が爆発するかもと見守る。
そして沖田が湯飲みを置いた瞬間、口を開いた。




「普通は、普通はの話ですよ?別に誰がこうって決めたわけじゃないですが、やっぱり事後ってのは一番ウキウキするじゃないですか。色々の終わった後の爽快感とか、触って触られての嬉しさとか。一段落して一緒に寝ようって時はあれこれやりながら寝るんですけど、俺ばっか寝落ちして土方さんは寝てないもしくは俺が寝た後に仕事とかどっか行ってんじゃないかって思えてきて。というのも俺が起きたら毎回土方さんは隣にいないんですよ。部屋にですらいないんですよ。こんなことってあります?仕事が無い日に調整したのに?そんなのないですよね?想像では俺が起きても隣でまだ寝てるか、部屋の中で着替えてるとかそういった流れかなって思ってたのに、ずーーーーっと、毎回毎回、いないんですよ。で、俺が着替え終わって部屋を出たら食堂で飯食ってたりとか、別の部屋で近藤さんと話してたりとか。別に仕事人間が悪いって言ってないですよ。言ってないけど俺の優先順位がまだまだ低いのかなって思えてきたらなんか腑に落ちなくて。でもこういうのって世間では面倒な奴って認識なので今まで言わなかったし、今後もしかしたら〜って期待もしてたんですよ。なのに!なのにまだ俺の順位が低いとか…!だから真相を掴むために頑張って起きてようとしても必ず俺が先に寝るんですよね。ここまでくると土方さんは俺に薬でも盛ってるのかなって思えてきたし、最終手段として薬返しで眠らせようとしたんですか、この狗は鼻だけはよくきいてタイミングが掴めずそのままグダグタのまま。そんで起きたらまたいなくなってるしの無限ループで。確かに土方さんは弱味を見せないし、こんな小娘と付き合うこと事態に困ってるっぽいし、抱き方は節度を守った教科書みたいな情事だし。大切にしてくれてんのはだいぶわかってますけど、そろそろ潔いお付き合いもマンネリというか。今回、他の旦那たちの話を聞くと男の本性はそうなんだなってわかったし、俺はそういう土方さんも見てみたいんですよ。乱暴は嫌ですけど。大切にされながらも少し荒々しく抱かれるのも憧れるっていうか…無いものを求めるのも仕方ないんですけどね…。」

堰を切ったように怒濤の本音を吐き出しながら、最後はため息で閉められる。
銀時と神楽は相槌を打てないまま一時停止。
土方も目を開けていないのに目が回っていた。




「えっと、つまり?」

「起きた時、隣にマヨがいないのが気に入らないみたいネ。
あとは塵が積もって積年の恨みみたくなってたアル。」

「だって…土方さんが…。」

「付き合って間もない人にありがちな流れだけど。」

「これは時が解決した方が早いアルな。」

「………………。」

「てなわけで、どうするよ神楽。」

「どうもこうも、あとは旦那に任せた方が早いネ。」

銀時と神楽はよいしょと立ち上がり、静かになった沖田を持ち上げる。
そして土方の隣に寝かせた。
それを合図に定春も起き上がる。
突然隣に現れた体温は覚えがあり、土方は不覚にも安心してしまった。
沖田からはスースーと音が聞こえるので、どうやら眠らされたらしい。




(とんだ策略家だな…)

思い出した。
以前、総悟のことでこの2人に軽く話した。
女ならわかるだろうって。
その時は「じゃぁ忘れた頃に調査報告をしてやるよ」って言われたのも、思い出した。
本当に忘れた頃に報告しやがったな。




「じゃ、そういうことだから土方くん。」

「可愛い嫁の本音を聞けて良かったアルな。
サドが起きるまでしっかり隣にいろよ。」

「あ、ちなみに俺は旦那限定の淫乱だから。
間違ってもオカズにすんなよ。」

「報酬は酢昆布と…あと貯まった家賃の返済ネ。」

「頑張って働けよ〜。」

ワン、という声がした後。
障子が開閉し、ペタペタのしのしと廊下を歩く音が遠ざかる。
そして部屋には沈黙が流れ、その中で沖田の寝息が聞こえてきた。




(不安にさせてたか、)

別に一緒に寝るのが嫌いなわけでも、弱味を見せまいとしていたわけではない。
ただそれが『性交』だと思っていただけ。
女が寝た後、静かに布団から出て一服して、そして別の場所で仮眠を取る。
あとはいつも通り仕事に戻るだけ。
沖田を抱く前からそういうスタイルでいたが、やはり遊女などと違い、気付かないところでズレもあったようだ。
だがそれだけ男女の付き合いが長いとも言える。

これはこれで万事屋に相談したのも良かったし、無事に解決できた、のかもしれない。
酢昆布に家賃…だいぶぼったくられたが、ここは支払ってやろう。
今は総悟が目覚めた後を考えなければ。
だがその前に、




「……………おい、山崎。」

「………………。」

「気まずかったら出てって良いぞ。」

「………………………………………………………はい。」





(いっしょに歩むと約束しよう)




19,07/14


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