12日の逢瀬









昼寝をしていた日だった。
それも珍しく布団なんて敷いて、風呂に入って、着替えて、歯を磨いて、という風に。
全身さっぱりして寝ていた。
というかもう本格的に寝る状態に近いのだが。

それもこれも先日、酒に引っかかって、飲んで呑まれて、朝帰りをしたからだ。
それで体内時計が狂ってしまった。




(また夜中に起きんだろーな…)

神楽も新八も、銀時が飲んで帰ってきたらしばらく生活習慣が乱れると学習したため放っておいてくれる。
物分かりの良い子供たちで良かったと思いながら、寝返りをうった。
だが今回はいつものように治るのは早くない、と思う。




「ン………。」

布団に顔を擦り寄せる。
今は甘える相手がいないのでこうするしかない。




(やられたな…)

酒を奢られた、のは良い。
しかし見事に酒に呑まれて沈没、というヘマをしてしまった。
本当ならそのまま押し倒されて身も心も甘く溶けるはずだったのに。
いつの間にか景色は飲み屋ではなく我が家のソファーの上。
これほど酒に後悔したことはない。

銀時は布団に頬ずりをして男の面影を探す。
しかし一夜を共にしたわけでもないので温もりもにおいも何もなかった。
あれほど鬱陶しかった煙が、今は恋しい。




「……か……すぎ…。」

掠れた声で呼んでみた。
今なら強引に奪われてもいいなんて思えてくるほど、人肌が恋しいのだ。
秋風が冷たくて、高杉に温めてもらいたい。

すると不意に手が重ねられた。
ゆっくりと目を開けて視線を上げていくと、嗅ぎ慣れた煙がふわふわと広がっていた。




「……………夢…?」

「かもなァ。」

「なら………消えろよ…。」

「そんなに怒るな、ほら。」

ゆっくりと近付く顔に、唇の感触。
本物かな、なんて思いながら潔く離れていった高杉を引き止めた。




「入って…。」

布団をめくって隣に入るよう促してみる。
すると高杉も気をよくしたのか、羽織を脱いで銀時の布団の中へ入っていった。

ぴったりと寄り添えば求めていた男の熱。
胸板に頬を擦り寄せてたまに吸い付くと、名前を呼ばれ頭を撫でられた。




「んン…。」

「銀時。」

「?」

「悪かったな、置いてって。」

「………………。」

「あの時、その後のことは何も決めてなかったんでなァ。
出直してきた。」

「珍し…。」

「あァ…テメェのこととなると、な。」

考えすぎてどうにもなくなる。
そう告げた高杉の声にトクトクと心臓が高鳴って、この熱い想いを伝えたくなる。
銀時は高杉の体をゆっくり押し倒し、唇を重ねた。




(本当に、高杉が…いる)

唇を吸うように重ねて、舌を滑り込ませる。
自分が気持ちいいようにやれば、相手も気持ちよくなるんだと、最近わかった気がした。

昼間の外からは色々な音がする。
だが、舌を絡ませる水音や高杉の息づかいだけは大きく聞こえた。
舌を甘く噛まれ、体がどんどん反応する。
と思ったら逆にゆっくりと押し倒され、静かに愛され続けた。



「ンっ…ふ……は…ぅ。」

「なんだ、やけに素直だな。」

「誕生日、だったんだぞ…っ
それを…放っておいて、」

「悪かった。」

「ん……っ」

「後で甘やかしてやる。
だから、今は眠れ。」

「やだ。」

「銀時。」

「今、して…。」

「おいおい。」

「次会えんの、いつか…わかんねーし。」

ただでさえ高杉との逢瀬にはタイムリミットがある。
それを睡眠で潰したくない、のに。




「ね………?」

高杉が、ほしい。

セックスは後でもいい。
だけどキスとか愛撫とかは今すぐしてほしい。
もっといちゃついて愛されて、それから眠りたい。
できれば目が覚めても隣にいてほしいとか、プレゼントを通り越してただの我が儘になっていた。

銀時は高杉の首に腕をまわして唇を奪う。
啄むように何度も重ねて、舌を絡ませる濃厚な甘さを味わって、また啄んで、また絡ませて、を何度も繰り返す。
癖になる。
この甘さも、空気も、快感も。




「ン……ん…は、ふ……。」

「っ…質悪ィな。」

「ぁ……もっと。」

「数日の放置でこんだけ素直たァ…ツンデレも程々にしろよ銀時。」

「…誰のせいだと思ってんだ。」

「テメェの胸に聞いてみな。」

そもそも、酒に呑まれて潰れたのは誰だ。
核心を突かれた銀時は頬を膨らませて高杉を睨む。
すると愉快だと言わんばかりにニヤリと笑ってくるもんだから、銀時も笑って空気に乗っかることにした。




「悪い俺に…仕置き、して。」

「ククッ
確信犯も困ったもんだなァ。」

直接肌に触れてくる高杉の手に、銀時は身震いする。
褒美も仕置きも、言葉が違うだけで言っていることは同じ。
後に控えているのは甘い時間なのだ。

昼間から盛るのも悪くはない。
眠れないぐらい愛してくれるなら、更に体内時計が狂ってもいい。
なんて、高杉の思うツボなんだけどな。




「お互いを困らせてそんなに楽しいのか、テメェは。」

「俺はお前に祝ってもらいたいだけ。」

「気持ちよく、だろ?」

「いつも以上にお願いします。」

肌を滑る高杉の手。
それが嬉しくて、銀時は脱がされる前に一枚一枚ゆっくりと脱いでいった。
その間も高杉の全身を撫でる手は止まらず、下着が足から抜ける頃には全身が火照っていた。
そして高杉も、狭い布団の中でもぞもぞと動くのに興奮したのか、帯を解いて銀時の愛撫を始めた。




「声洩れそうなら口付けてやるよ。」

「ン……じゃあ、安心して善がらせていただきます…。」



















周りに祝られた最後のシメが高杉さんだと嬉しいって話。
銀さんおめでーす!


15,10/12
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