遅刻魔なアイツ








※微裏注意






突然だが。
物事は期待すればするほど叶わないものだと実感する。

身近なのは宝くじとか?
期待しても当たらねーし、何かと期待してない奴が当たったりする。
それもこれも、無欲の勝利ってやつで。



それで問題なのは今現在。
年が明けてアイツがどのタイミングで来やがるか冷や冷やしながら新年の挨拶回りをしてはドタバタ騒いで酔った勢いでドンチャンやって…と正月でもいつものような生活をしていたがアイツは顔を見せなかった。
アイツの事だから大晦日あたりから呼び出されて「今年最後だ。」とか言って何時間もかけてゆっくりやってそんで繋がったまま「姫初めだ。」とか何とか言って3ラウンドぐらいやっちゃうかと思ってた。
その為に俺はムダ毛を処理したり爪を切ってなおかつ爪垢まで掃除したりしてできるだけ綺麗な格好でその時に備えていた。

…にも関わらず、だ。




「何で来ねぇ…。」

銀時は布団の中でうーんと唸っていた。
年が明けて一週間。
顔を見せるどころか連絡さえしてこない。




(ったく……)

あの馬鹿、人がせっかく…。

銀時はハァとため息を吐く。
そしてズボンの中に手を入れて、既に反応している己の息子に手を添えた。
最近はもうずっと勃ちっぱなしで、自慰の回数もだんだん増えてきた気がする。




(だらしねぇな…)

ティッシュを取りに行くのも面倒なので、そのまま布団のシーツを使う。
神楽が押入で寝ているため、警戒しながらも布団の中で少し腰を浮かせて四つん這いになった。

そしてズボンと下着を下ろして性器を出す。
そのままシーツで覆い、いつものように性器を扱き始めた。




「ん……ん…っ」

シーツも…イイ。

ティッシュではない布の質感。
少しごわごわしているシーツが、銀時の先走りで濡れていくのがわかった。




「ンん………ぁッ…っ」

布団の中で反響する水音。
限界だと悟った銀時は、高杉の顔や声を思い出して脳内で繰り返す。
すると全身が甘く痺れ、ドロドロとした粘り気のある精液が放たれた。

その瞬間、玄関の方から扉が開くような音がした。
銀時は呼吸を整えながら手を止めて気配を探る。
すると気配は何の躊躇いもなくヒタリヒタリと廊下を歩いてきた。




(んの馬鹿…)

タイミングを考えろ、と心の中で悪口を呟く。
そして銀時は性器をしまい、手早く身なりを整えた。
と同時にゆっくりと襖が開く。




「……………。」

「……………。」

「……………。」

「……………。」

「……………。」

「…………んだよ。」

「……………。」

「っ…寒ぃから。
早く、閉めやがれ…。」

沈黙に耐えきれなくなった銀時は、我慢できずに口を開いてしまう。
うつ伏せのまま枕に顔を埋めて、なるべく相手の顔を見ないようにした。
すると気配は動き、襖を閉めてすぐ銀時の布団の中に入ってきた。




「っ……ちょ、馬鹿杉…。」

驚いた銀時は必死に押し出そうと試みる。
しかし抵抗する手を取られて一気に引き寄せられてしまった。
おかげで相手の体に密着する。

久々の体温や感触。
それに安堵している自分が、抵抗という言葉を頭の中から消してしまう。
そのことが物凄く悔しくて、嬉しい。




「…高杉。」

「何だ。」

「あけおめ…。」

「……………。」

高杉の胸板に顔を埋めながら新年の挨拶を呟く。
そのまま引き寄せられるように高杉の肌に唇を寄せてキツく吸い付いた。




(したい…)

早く、欲しい。




「晋助……。」

「銀時。」

名前を呼ばれて顔を上げれば、自然な流れで唇が重なった。
それだけでピクピクと体が反応してしまう。
口付けから快感を得て気を良くした銀時は、高杉の唇を吸う度にわざと音を立てた。

これで欲しいものをくれる。
銀時がそう思っていた矢先、唇が離れてぎゅっと抱き締められた。
次いで聞こえてくるのは規則正しい寝息。




「ぇ………。」

「……………。」

銀時が目を凝らすと、そこには目を閉じて既に夢の中に入っている高杉がいた。
これはまさか、




「…………………………………………はぁ。」

気難しい気まぐれな気分屋。
これだから猫は困る。

起きそうもない高杉に、銀時はため息をこぼす。
そして高杉の頬を撫でた。
おそらく働き詰めだったんだろう、だからこんなに無防備に寝ているのだ。




「ったく、」

お前がどこで何してんのか知らないってのに。
高杉の良いように解釈してしまう自分に、つくづくコイツには甘いなと笑う。
それでも、高杉を嫌いになれない自分がいるのだ。




「…仕事は全部片付けてきたんだろうな。」

「……………。」

「朝になる前に、初詣行くぞ。」

「………………。」

「そしたら…お前の好きなようにして、いい。」

「………………。」

「っ…今年も、よろしくな。」

銀時はそう言って、再び胸板に顔を埋めて目を閉じた。









(今年も初っぱなから惚れた弱みかよ)




15,01/08
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