前世も来世も変わらない







※囚人×看守パロ
なんとなく転生風味









鈍い音を立てて扉が開く。
月明かりで照らされた暗闇に足を踏み入れた。
コツコツとまっすぐに歩き、あるところで止まる。




「ほら、起きろ。」

男は檻の中にいる獣に話しかけた。
隙間から照らす月明かりがいつもより眩しく、何故かいつもより美しい。
感傷的になるなんて俺らしくない、そう思った。

すると檻の中でしゃがみこんでいた獣がクツクツと笑って男を見た。
ああ、こいつの目を拝めるのも最後なのか。




「ずいぶんと早ぇ呼び出しだな。」

「異例の事態だ。
テメーに関しては早いこといなくなってもらいたいのさ。」

「フン。」

「おかげで俺の睡眠時間が減ってストレスMAXなんですけど。」

「クク…最後にテメェをそんだけ苦しめたんなら後悔はねぇか。」

「んだとコノヤロー。」

男は厳重な檻を開け、獣を外に出す。
そして再び暗闇を歩き始めた。




「相変わらず甘ぇな。」

「素直に俺の後ろを付いてきてるテメーがそれを言うか。」

お互いが隙だらけなのに何故か争いは起きない。
むしろ背中を合わせて共に戦えば無敵なのではないかと思う。

己を拘束しないでのんきに歩いている目の前の男を見て、獣はニヤリと口角を上げる。
何度も檻の中に入れられたが、こんなに仕事をしないかつ居心地の良い人間に会った初めてだった。
コイツの存在を知っておけば、もう少しマシな人間になっていたかもしれない。
そう思えてしまうほどに。




「俺はどうやら、獣になり損ねたらしい。」

獣は最後の最後まで生きようと、本能でもがいて抵抗するモノ。
最後の最後で潔くなってしまうとは。
獣と呼ばれる己が聞いて呆れる。




「ったくテメーは…。
何を言い出すのかと思いきや。」

「あぁ?」

男が立ち止まって顔だけ後ろに向ける。
そのやる気のない赤い目に睨まれ、獣は不思議と体が動かなくなった。




「俺もお前も人間だろうが。
ワガママで分からず屋で変なとこで感情的になって、全く成長しねーまま未練タラタラで死んでいく。」

だから、お前は獣なんて綺麗なもんじゃねぇ。
薄汚く、それでもしぶとく生きてる同じ人間なんだよ。




「……………。」

「わかったら最後の名言でも考えとけバーカ。」

男は前を向くと再び歩き出す。
そのダルそうに生きている態度からは全く想像してなかった姿。
それを見た獣は、しばらく驚いたままフリーズし、そしてニヤリと笑って歩く。




(コイツに説教されるとは…)

畜生。
俺としたことが、反論できなかった。




「次も会いてぇな。」

「あ?」

「お前に。」

「そうかい。
じゃぁさっさと済ませて早く会いにこい。
今度こそもう少し大人しくなって、」

「ふざけんな。
俺なこのままが一番なんだよ。」

「また食う食われる立場になっても知らねーぞ。」

「今更だろ。
俺たちはどっちかが折れねぇ限りぶつかり合う運命なんだからな。」

「あーもう平和に暮らしてぇ!」

「じゃぁ俺に付け。」

「嫌ですー。」

「ククッ
俺もお前も素直じゃねぇな。」

「まぁいずれにせよ今回は俺の勝ち。
お後が宜しいようで。」

男は止まり、目の前の扉を開けた。
地獄への道案内はここまで。
あとは背中を見送ることしかできない。




「じゃあな。」

「あぁ。」

男は仲間に敬礼し、獣を引き渡す。
すると獣はいつものようにニヤリと笑い、男を見て言った。




「俺ァ…ただ壊すだけだ。」

(首洗って待ってろ)












(負けた者が笑い)
(勝った者が泣く)














扉がバタンと閉じる。
男は目を閉じ、そして一粒の涙をこぼした。




「次に会ったら全力でテメーをぶった斬る…か。」

(お互い成長しねーままだなぁ)




14,06/19
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