鳩原未来
彼女を夢見て


『二宮隊の勝利です』

アナウンスが鳴る。
この試合も私たちの勝ち。
当然だ。
B級のランク戦で私達は負けるわけにはいかない。
もう一度A級に戻って遠征チームに選ばれる。
それから…

「神威」
「あ、二宮さん」

自分のチームの隊長に呼ばれて私は意識をそっちに向ける。
今日は一発も外さずちゃんとあてた。
いつもより調子が良いくらいだ。
だからこそ、
隊長に呼ばれた時ちょっとだけドキッとしたのだ。
恋愛的な意味ではなく…その…心構え的な感じで。

「さっきのは何だ」

やっぱり来たと、思った。
「ちゃんとあてましたよ、私」
「ふざけるな。
狙えるなら最初から頭を狙え。
殺されるリスクを上げるな」
隊長が言いたい事は分かっている。
狙撃手が敵に位置がバレるというのは致命的だ。
自分を狙って下さいと言っているようなもので、
普通は撃ったら別の場所に移動して、
自分の位置を割り出されないようにする。
それだけ、狙撃手が一発撃つというのは重みがある。
私はさっきの試合で、
最高の一撃を喰らわせる事のできるベストポジションにいた。
その一発で相手をベイルアウトさせる事ができた。
なのに私はその場面で相手の頭を狙わず、武器を破壊した。
そして相手が私の位置に気づいて動こうとしたところで二発目。
頭を吹っ飛ばした。
私がわざと無駄な行動をした事に、
隊長は怒っている。
その行為は自分だけでなく、仲間を危険に晒す可能性だってある。
知っている。
いざという時、人が撃てないのはどういう事か。
隊長が言っていたのを私は覚えている。

「だってムカついたんですよ」

試合前に彼奴らは言ったんだ。
一人が隊務規定違反しただけでB級降格なんて可哀想だって。
鳩原未来が人を撃てなかった無能だって。
彼奴がいなくなって丸く収まって良かったんじゃないのって。

私は鳩原未来が嫌いだ。
あの人のせいでB級に降格した。
あの人は私達の信頼を裏切った。

私はあの人が嫌いだ。
だから、ふざけるなと思った。
何も知らないくせに…好き勝手言う彼奴らに腹が立ったから、
私は鳩原未来のように武器を狙った。

「はぁ…」

隊長が溜息をつく。
理由は察したんだと思う。
この人頭良いし…。
「素直なのはお前の美徳ではあるが、
隊を危険に晒すような事は二度とするな」
「努力しまーす」
その言葉に睨まれるけど、怖くない。
隊長のそれにはもう慣れた。
「次の対戦相手だが、恐らく玉狛第二がくるだろう。
私情を挟むなよ」
「はは、当然ですよ。
誰が相手でもいつも通り撃ちます。
勝って、A級に戻りましょう!」

そして、遠征チームに…。

私はその言葉を呑み込んだ。


私は鳩原未来が嫌いだ。
あの人のせいで私達はB級に降格した。
あの人は私達の信頼を裏切った。
あの人は…
私達に何も言わずに消えた。
私達に何も相談してくれなかった。
私達は…同じチームなのに、
今まで一緒に戦ってきたのに、
私達に何も頼ってくれなかった。
私達じゃ、力になれなかったのか。

悔しくて、寂しい…。

こんな想いをさせた鳩原未来が嫌いだ。
大嫌いだ。


狙撃を教えてくれた鳩原先輩の顔が頭をちらつく…。


こんなにも嫌いなのに、
私はいい先輩だった鳩原未来が忘れられない。


本当にムカつく。
鳩原未来。
私はアンタが嫌いなの。
もし、二宮隊に戻ってくることがあっても撃たせてなんかあげない。
標的を外さないくらい…私、強くなったの。
アンタはいつも通りに武器だけを狙えばいいわ。
私が人を撃つから。

だから早く、その顔を見せて、
私に脳天ぶち抜かれてしまえばいい。
そして、皆に怒られてまた――。


20150709


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