帝国兄と洪 0513

「何やってんのよ、レン」
「ギルベルトと喧嘩した」

呆れ顔のエリザにでこぴんをされた。

「痛い」
「痛い、じゃないわよ」

あの後、ギルベルトと本格的な殴り合いになった。結構なおおごとなっていたらしく、フランシスやアントン辺りまでが止めに来た。心配そうなルイの顔が頭を過った、見られたくなかったな…。

現状、俺はエリザに引っ張られて屋上に連れてこられていた。

「ギルベルトは?」
「ルイが保健室に連れていったわ、レンも怪我の手当てして来なさいよ」
「いや、いい。今はアイツの顔は見たくない」

寝転がると、暖かい気温と風が心地よかった
何となくだけど、思い切り殴り合ったおかげかスッキリとした気がする。
巻き込んだギルベルトには悪いかもしれないが、吹っ切れたともいえる心境だ。

「吹っ切れた顔してるわね」
「大分、な」

俺の顔を覗き込んできたエリザが微笑んだ。

「アイツの事はやっぱり認めたくないけど、アイツが本気なのはわかった」
「馬鹿正直な奴だしね」
「だからさ、ギルベルトが本当にルイを幸せにしてくれるのか、見守る事にする」
「へぇ、レンにしては凄い進歩じゃない」
「そういってくれるなら、よかった」

ほら、とエリザに差し出された手を取り起き上がる。

「吹っ切れたなら、手当てしに保健室に行くわよ?」
「ん、了解」

エリザの手から伝わる温もりに頬が弛む、それと同時に胸の辺りが暖かくなった。

「なぁ、エリザ」
「何?」
「あのさ、……やっぱ何でもない。ありがとな」
「何よ、変なレンね」
「それはどうも」



このままの関係の方が俺にとってはいいのかもしれない、だから俺の気持ちをエリザに言うことはないだろう。
保健室でギルベルトに出会ったら、今度こそ辞書を投げ付けてやるか。


繋いだ手に誓いを
(好きだ、なんて言える訳もなく)



category:うちのこ
タグ: APH


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