華月と馬岱 0514
執務も終え休憩も兼ねて城下町に行こうとしていた所、立ち尽くしているお嬢の後ろ姿を見かけた。
こんなところで何をしているのだろう?お嬢が暇なら一緒に城下町に行かないか、と誘いでもしてみようか。
「お嬢ー、こんなとこで何してるの?」
「岱ちゃん…」
振り返ったお嬢は今までに見たことがないほど寂しそうな表情を浮かべていた。
「…お嬢?」
「ごめん、何でもないよ。あ、岱ちゃん!よかったら一緒に城下町にい」
言葉を遮るようにお嬢の手を取った。
「…お嬢、話したいことがあるからちょっと俺の部屋に行こう?」
「え、岱ちゃ…!」
俺はお嬢を部屋に招き入れて座らせる。今もそうだけど道中もお嬢の表情は浮かない表情だった。
お嬢と向かい合う形で腰を下ろしお嬢の両手を包み込むような形で握り締める。
「…どうしたの、岱ちゃん?」
「ねぇ、お嬢。若と何かあったの?」
若、という単語にお嬢が一瞬表情を歪めたのを俺は見逃さなかった、…やっぱり若関係か。
「別に、何もないよ?」
「お嬢…、嘘はいけないよ」
「嘘なんか…!」
ついていないっていうなら、どうしてそんなに無理して笑おうとしている?
そんなお嬢を見ているのが耐えきれなくて無我夢中ともいえるようにお嬢を抱き締めた。
「岱、ちゃん…?」
「お嬢、聞いて」
背中をぽんぽん、と叩くとお嬢が俺に身体を預けるのがわかった。
あぁ、本当。お嬢の感情が若じゃなくて俺に向けば良いのに、そうしたらどれだけ幸せな事か。
だけど俺は、
「お嬢は無意識に若の事を目で追っていることある?」
「ある…かも、しれない」
「そっか、それはお嬢が自覚してないだけなんだろうね」
「…自覚?」
「そう、お嬢の心はいつのまにか若に向いていたってこと」
「私が、馬超に…。じゃあさっきのもやもやは」
「お嬢が若を想ってるからこそ、もやもやしたんだよ」
…そうなんだ、と小さく呟いたお嬢の声が耳に届いた。これでお嬢が自分の気持ちに自覚したと同時に俺の想いが報われないことも決まったようなこと。
…本当何をやっても若には勝てないなぁ
でも、いまこの瞬間だけは。若の知らない華月を知っている事に幸せを感じさせて。
離れたくないのよハニー(小さな君の身体を抱き締めて)
category:無双
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蜀