馬華 0514
思い返せば出会いは何とも印象が悪かった、というか最悪だった。
「蜀へようこそ!」
今日から新たに蜀へ加わる事になった馬超と馬岱に合掌をし挨拶をする。
陽気そうな馬岱という人は笑顔で合掌を返してくれたけど、問題は馬超の方だ。
私の事を見るなり鼻で笑うような態度をとって見せてから視線を逸らされた、流石の私もこの態度は気に掛かり、馬超を睨み付けた両者の間に火花が飛び散るのを遮るように馬岱が入ってきてその場はお開きという形になった。
私はその後も何の話もせず素っ気ない態度を取り続ける馬超が気になって色々とちょっかいをかけ続けたが全てスルーされるという切ない結果に終わる。
「何なんなの、あの馬超って奴!」
文句の一つでも言いたくなる!思い出すと嗚呼またあの嘲笑う顔が浮かんでくる。
衝動に任せて壁を殴ろうとしたところをいきなり背後から首根っこを捕まれ、私の身体は少し宙に浮かんだ。
「それは俺の台詞だ、勝手に人のまわりをちょこまかしやがって」
「ばっ、馬超!」
まさかの本人登場である。
表情からもイライラしてる様子が伺える、どうやらタイミング悪かったようだ。
しかしここで引いてはいけない、今日こそ馬超と対等に話してみせる!
「…やっと話す気になった?」
「俺がお前と話す事なんてない、馬岱とでも話しておけばいいだろ」
「岱ちゃんは今は関係ない!私は馬超と話がしてみたいの、それすら駄目なの?」
「俺と話…?馬鹿か、強がることしかできない女が何を」
その言葉にカチン、ときた時にはもう遅く私は馬超に渾身の蹴りをいれた、その衝撃で宙に浮いていた私は解放される。
「いっ!!…今まで女だからといって手加減してきてやったが今日という今日は許さん!何なんだ、お前は!」
「お前、じゃない!私にも名前があるの!」
そこからはお互い頭に熱があがってヒートアップする一方、言い合いも交える掴み合いの喧嘩に及んだ。力で私が勝てるはずはないのはわかっていたけど女だからと決め付けられるのは嫌で、力のかぎりで馬超にぶつかった。
どれぐらい時間が過ぎたのかはわからない。
気付いた頃にはもう夕刻で二人して廊下に寝そべって荒い息を整えていた。
冷たい風が頬を撫で、荒んでいた私の心を落ち着かせる。当然馬超の方を見ることなんかできずに背中を向けたまま。
あーあ、遂にやってしまった。これで嫌われたのは確実だ、仲良くなりたかったはずなのに何でこうなっちゃったんだろう。
後悔してももう遅いのに涙が込み上げてきた、うっすらと視界が霞む。
そんな時、背後からくつくつと笑い声が聞こえた。何事かと思い身体を起こし振り返ってみると、胡坐をかき笑いを殺している馬超の姿がそこにあった。
…意味がわからないんだけど
「…ははは!いや、本当お前は馬鹿と言うことがよくわかった!」
「えっ、ば、馬鹿はないでしょ!」
「お前ほどの大馬鹿者に出会ったのは初めてだ!」
「なにそれ、ちょっとひどいんだけど!」
気が付けば涙も引っ込んでいて、また馬超に突っ掛かっている自分がいた。
「お前面白い奴なんだな!」
そして引き寄せられ強制的に馬超の隣へ、バシバシ背中を叩かれる。力加減してないから痛いんだけど!どうすることも出来なくてそのまま馬超を眺めることにした、ついに笑い泣きまでしてるし。
あ、笑ってるところ始めてみた。
むっすりした表情か嘲笑うような表情しか知らない私には馬超の笑顔がとても新鮮で眩しく感じた。
…笑顔の方が、全然いいのに。
気が済むまで笑ったのか、一息ついた馬超と視線が交わる。
「名前」
「え?」
「お前の名前、聞いてなかったな。教えてくれないか?」
「華月、だけど」
「華月…、そうか華月か!いい名前だな、気に入った!」
両肩をガシッと捕まれる、だから力加減してほしい。
「今まで悪かったな…、お前の事を女だからといって関わろうともせずにいた事を許してほしい」
まさかの土下座である、ちょっと待って何で頭下げられてるの。
「あ、頭あげてあげて!」
「しかしだな…」
「いいから!」
力ずくで馬超の頭を上げさせ、一息つく。
「…お前は本当に変な奴だな」
「それ褒め言葉なの…?」
「俺から華月への最大の褒め言葉として受け取ってくれ!」
「…なんか、何とも言えない…」
不思議だ、馬超と普通に話してる。今日までの出来事からは考えられないけど、少しでも馬超に近付けたんじゃないかと彼の笑顔を見ながら思う自分がいるのです。
それはまるで夢のような(出会いといえるものでした)
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