華月と馬岱 0514
(もしも、)
泣いたんだろうな、お嬢の表情を見て一目でわかった。
何時も通り変わらない笑顔を浮かべているつもりだけど何処か虚無感があって笑えていない、むしろ無理して笑ってる。
その理由は俺も知っていることで、お嬢の気持ちに薄々感付いてた俺はお嬢の気持ちが痛いくらいにわかる。
「お嬢」
俺も何時も通りに接するけど感じる違和感、俺には何も出来ない。
お嬢を幸せにする事はきっと若しか出来ない事で、たとえ俺がお嬢を愛しているからといってもお嬢には届かないだろう。
…こんな時にまで適わない若の存在と何も出来ない自分に苛立ちを感じる。
「…岱ちゃん?」
「何も言わなくていいよ」
ぽん、と背中を叩くと瞳から涙が一筋零れた。
泣き顔、はじめてみた。
そのまま抱き寄せるとお嬢は縋りつくような形で泣き付いてきた、声を押し殺して泣くその小さな身体を俺はただ力強く抱き締める。
今は、俺だけの華月。
不純な優越感、この状況に幸せを感じてしまう事とお嬢の気持ちが若から俺に向かないかと心では願っている自分はなんて卑怯なんだろうか。
(押し殺したはずの想いが徐々に膨れ上がって、欲望へと変わっていく)
category:無双
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蜀