あやあざ 0829
綾部くんが掘った落とし穴を見つけたから埋めかえそうと足を一歩踏み出した。あ、迂闊だった。踏み出した其処にも落とし穴があったのに気づかなくてそのまま声をあげる暇もなく穴の中へダイブ。対して深くなかったからよかったものの、落下の衝撃で打ち付けた身体のあちこちが痛い。
「いたたた…」
さて、ここからどうしようか。深くはなかったけど自力で抜け出せる高さではない、助けを求めようにも人が通る気配が全くしない。
「仕方ない、かぁ」
装束についた砂埃を軽く叩き膝を抱え込むように座り込む、きっとだれかが落ちたのを綾部くんが確認してくれるはず、それまで一眠りでもしておこう。
「先輩、先輩」
ぼんやりとする意識の中で誰かに呼ばれてるのに気付く。
「薊先輩」
重い瞼をこじ開け声のする頭上を見上げると綾部くんが身を乗り出してこちらを見ていた。あぁ、よかった。綾部くんが見つけてくれた。
「綾部くん」
「大丈夫ですか?」
伸ばされた手を掴むと綾部くんが力をいれて手を握りしめた。意外と力あるよね綾部くん。
「大丈夫だよぉ、ありがとう」
引き上げられた勢いでそのまま綾部くんの胸元にダイブしてしまった。落とし穴といい綾部くんといい今日はよくダイブしてしまう日だ。
「わっ、ふ」
綾部くんから離れようとしたら逆に背中に腕を回され綾部くんにくっつく体勢になってしまった。さっきまで落とし穴でも掘ってたのだろうか、土の香りが綾部くんからする。なんだか心地よい。
「…綾部くん?」
暫く黙っていた綾部くんだけど、そのまま何も言わずにぎゅうぎゅうと抱き締められる。何だかよくわからない状況が起きる日だけど、綾部くんといれるなら落とし穴に落ちるのもちょっとは悪くないかもしれないなぁ。
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