愛と英 0513

ソファーに腰掛けて紅茶を飲んでいた時の事、背後から肩を叩かれた。

「やぁ、我が弟」
「っ、ジャスパー兄さん」

声をかけてきたのはカークランド家次男のジャスパー・カークランドだった。
自分に対して笑顔を浮かべているところをみると、どうやら兄さんの機嫌はいいらしい。珍しい…何かいい事でもあったのだろうか。

「この前な、お前が大切にしてる子に会ってきた」

兄さんの言葉が頭に引っ掛かる、俺が大切にしている奴といえば一人しかいない。

「それって…」
「美鈴、といったな。なかなか反抗的というか、気の強いお嬢さんだな」

嗚呼、やはり美鈴だった。
信じられない、信じたくない、どうして兄さんが美鈴に会いに行ったのか理由が見当たらない、動揺と共に心臓が高鳴る。

「どうして?という顔をしているな」
「そ、んな事は」
「わかりやすい動揺だ」

ジャスパーは軽く息をはき、アーサーに向かって微笑んだ。内心は何を考えてるのかわからないような笑顔で。

「別に奪おうとしているわけじゃないさ、我が弟ならわかるだろう?」

やさしく笑みを浮かべる兄さんからは恐怖心しか感じられなかった。
はやく、はやく美鈴に会いにいかなければ。



微笑みの下に隠れているのは
(優しさか、それとも恐怖か)



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