ちとちと 0116
よりによって三年生になってから転校だなんてついていないにも程がある。アメリカに留学してたというのもあるけど新しい所で過ごすだなんて、コミュ障の私には一番の難関だ。そう、話さなければいい話ではあるけど!それでも転校生ともなれば見知らぬ人達にわらわら囲まれて質問攻めにあって…、想像しただけでも倒れてしまいそう。過去に何度か体験した経験者は語る。
しかも今回はもう大好きなお兄ちゃんは一緒じゃないのだ、どうして私だけ一年留年して三年生しないといけないの、お兄ちゃんと一緒の高校ならまだしも逃げ道があったのに。
靴先を見つめながら重たい足取りで坂道を登る、正直もう帰りたい。
「…やだなぁ」
何よりも怖い、誰も知らない人だらけのところに一人だけ放り込まれるのが。じんわり涙が込み上げて視界が霞む、こんなところで泣いちゃいけないのに。
「わっ、ふ」
涙を振り払おうとぶんぶん首を降っていたら前を歩いてた人にぶつかってしまった、やってしまった!謝らないと、
「あ、あの、ごめんなさい」
「ばってん、気にせんたい」
顔を上げるとお兄ちゃんよりも大きいのであろうか男の人、制服からして通うことになった学校の人…みたい。
「ん?見かけん顔ね、転校生?」
「え、あ、は、い」
「よかよか」
人の良さそうな笑顔を浮かべたその人にぽんぽんと頭を撫でられる、それがお兄ちゃんと被って見えて私は何も言えないまま固く握った両手をまだ強く握り締めるしかなかった。
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