幸村→百合 0805

あの子は空が好きだった。
教室からテニスコートから病室のベッドから、見上げてはいつも楽しそうに微笑み俺に話しかけていた。
冬を終え桜が舞う季節へと続く澄み渡る空気の空を見上げる、頬に当たる風が冷たくて心地よい。涙が枯れ果てる程泣いた頬を通り過ぎる。あの子はあの空で手を振ってくれるだろう、幸村くんと笑いながら。
「百合」
一言、空に向かって声を上げる。あの子が愛した空を、もう手の届かない処まで行ってしまったあの子の手を、握れなかった情けなさに落胆して泣いたあの日を。
「愛してくれてありがとう」
君が渡せなかったマフラーを首に巻き小さく、しっかりと言い残す。空を見上げる度に俺はきっと君を思い出すから、安心して待ってて。

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中三卒業式間近に百合病死ルートのゆきゆり、ひこうき雲を受けて



category:庭球
タグ: ゆきゆり


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