ひかせつ 0707

俺も買うから色違いやけどお揃いにしよか、謙也兄の一言で決まったノートパソコン購入。前々から欲しがってた新型を買うことになった結果、謙也兄に便乗する形で自分専用のノートパソコンを手に入れる事になった。
クラスで話題に持ち上がってる笑顔動画を見てみる、多種多彩に溢れかえっている動画に驚きを隠せない、そういえば光くんもネットを良くするだとか曲を作るのが好きっていうのを聞いたことがある気がする。確か、ボーカロイド、だったかな?
検索欄に打ち込みクリック、沢山の動画が出てきたことでボーカロイドで間違いはないと思う。

「うわぁ…いっぱいあるんや」

スクロールして呆気にとられる、とりあえず手始めにボーカロイドがどういう物なのか聞いてみようと思い、目に止まった一つの動画をクリックする。読み込んでいる間にヘッドフォンをセット、うん準備完了。
再生を押すとヘッドフォンから流れ出す音楽と機械音と思えないような歌声にふわり、世界が広がった。紡ぎ出される音楽はとても綺麗で一瞬にして刹那の心を魅了していく。
タグ、と書かれたものをみるとこの曲の作曲者らしい単語が目に入った。
"ぜんざいP"
気が付けばその人が作った曲を一つずつ巡っていた。


*


軽快な音と同時に新着コメントが一件届いているのが表示された。光くんからだ、パソコンを買ったことを伝えると彼は嬉しそうにスカイプを教えてくれたので早速ダウンロードしてみたけどしが光くん、こういう面では謙也兄に負けへん程に浪速のスピードスターなのかもしれない。

【刹那、スカイプいけたん?】
【いけたよ、ありがとう!これでええんやんな?打てとる?】
【打てとるで】

ぴこん、ぴこん、音がなると共に光くんからのコメントが受信される。こっちのタイピングが遅いのが申し訳なくなるぐらいに光くんからのコメントは速い、頑張らないと。

【今度マイク見に行こか、ある方が便利やし】
【そうなん?】
【通話できるで】
【え、そんなんできんの!?】
【いちいち反応かわええなぁw】

普段話すのとはまた違う一面の光くんにドキドキする、口じゃ絶対言わないような事をさらっと打ってくるんやもん。

【光くんのいじわる】
【はいはい、明日撫でたるからそれで帳消しな】
【…ならよし】
【素直で結構】

嗚呼もうずるいなぁ、こっちがずっとドキドキばっかしてもう、光くんの顔を浮かべると頬が熱くなるのがわかる。

「刹那、夕飯やって」
「あ、すぐ行く!」

扉越しに謙也兄の声が聞こえ慌てて席を立つ。

【ご飯やから切るね、光くんまた明日な!】
【また明日】

ゆっくりとパソコンを閉じる、早く光くんに会いたい。


*


次の日の朝練前、昨日の約束通りに挨拶と一緒に頭を撫でると見てるこっちが幸せになるような笑顔を刹那は浮かべた。ほんま可愛い、俺の嫁…もとい彼女。
一日の学校生活を終えタイミングよく部活も休みということで刹那とマイクを買いに行く事になった。元々ぜんざいPとしての活動としてしか使い道のなかったマイク、偶に生放送とかに使われる程度やった物が刹那とのスカイプの為に活躍出来ると思うとニヤけそうになってしまう、刹那と話し放題やで?そりゃ顔合わせで話すのが一番ええことやけど限りがある、学校外でも刹那と繋がりが持てることが何よりも嬉しい。俺の足取りはいつもより軽かった。光くん?顔を覗き込んでくるその上目遣いは反則やで、離したくなくなる。
色んなマイクを手に取りながら感嘆を浮かべる刹那を横目にマイク選びをする、刹那がネット上でマイクを使って活動することは余り考えられないが万一の可能性もある、それなりにいい性能のがいいだろう。

「これとか…」
「それがええ感じ?」
「俺のオススメはこれやな」
「それやったらそれにする!」

手渡されたマイクを眺めて笑みを浮かべる刹那が可愛くて仕方ないんすわ、ほんまに。

「これで光くんといっぱい話せるんやね!」

だから、可愛すぎるやろ。


*


「そうや、光くんが言ってたボーカロイドきいたで!」

席が前後の俺と刹那は休み時間になると俺が後ろを向いて刹那の机を挟んで話すのが日課になっている。最初は冷やかしもあったような気もするけどもはや今となってはクラスでの日常の一つになっている、俺としては嬉しい事や。

「聞いたん?刹那的にはどうやった?」
「そやねー…ミクが一番よかったかなぁ、ルカも素敵やったけど!」
「刹那らしいわ、わかる」

一つ一つに表情を変えながら話す姿がものごっつ可愛い、自分で言うのもアレやけど相当なぐらい刹那の表情に行動に心持ってかれている自分がいる事実。しゃーないやん、好きなんや。

「あ、あとな!凄い好きな曲作る人おったねん!」
「なんとかPってのか?」
「うん、それや!えーとな、えーと確か…」

まぁ曲は上げているしぜんざいPとしての活動も生放送にまで至るからそこそこは有名になってきているのかもしれない、が流石に刹那は知らないだろう。

「ぜんざいPっていう人!」

危うく噴出すところだった、いやまさかすぎて。予想はしとらんかったけどこんな偶然あってたまるか。



category:庭球
タグ: ひかせつ


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