転生はちこと 0402

「三郎くん?」

扉を開け放つがそこは空っぽ、人影一つすら見られない夕日が差し込み赤く染まった教室には机が規則正しく佇んでいるだけだった。委員会の用事があるから教室にいる、三郎くんに告げられたのは一時間前、まだ用事の方は終わってないのかもしれない。ここで待つのも仕方ない、図書室にでもいって時間を潰そう。扉に手をかけたその瞬間、何者かに手を引かれバランスを崩した私は教室に身を投げる形になる。

「誰っ…?!」

返事はない。扉に背中を預ける形で押し付けられる、怖い。頭の中を支配するのは恐怖心。三郎くん、無意識に彼の名前が口から零れた。ぴたり、動きがとまる。薄目で覆い被さってくる人を見る。見慣れた赤斑眼鏡と同じ深紅の瞳と視線が交わる。

「…さぶろう、くん?」

あーあ、と小さく呟いた三郎くんは罰の悪そうな顔で私の頬に手を添えた。

「怖がらせてごめん」
「何で」
「…琴がどんな反応するか、見たくて」

名前、呼んでくれて嬉しかった。耳元で囁く声と共に暖かい体温に包まれた。



category:落乱
タグ: はちこと


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