たけあやと綴 0619
静まった隣の部屋を兵助と一緒に覗いてみたら案の定、ハチが布団に寝そべる形で枕に顔を突っ伏してくたばっていた。
「……朝から壮絶だったみたいだな」
「そりゃああれだけ派手な物音してたしね」
「そうなのか?」
兵助は寝起き覚醒前だったから知らないだろうけどね。いつもにまして凄まじかったよ…、部屋に散らばる枕の様子からも喧嘩の激しさが伺える。
「おーい、はっちゃん生きてるー?」
呼び掛けてみるとぷるぷる震えながら右手があがった。うん、大丈夫そうなら一安心。兵助がはっちゃんの傍に立ち寄ったようだし後は何とかしてくれるだろう。僕は杏仁豆腐でも食べながらはっちゃんが復活するのを待っておこうかな。
ハチと喧嘩した。またくだらない理由で、まわりからしたらそんな些細なことで?って思われるかもしれないのはわかっている。だけどどうしても喧嘩になってしまう。…悪い癖。手当たり次第に近くにあるものを投げつけた。手元にクナイがなくてよかったと思えるほど。ハチのことだから怪我とかはしてないと思う、けど。
「…馬鹿ハチ」
木陰に腰を下ろし膝を抱えてぽつりと呟いた言葉はまた可愛くもない言葉。本当素直じゃない、こんなのだからいくら腐れ縁だからといえ、いつハチに愛想尽かされて嫌われるなんてわかりきったことなのに。
「馬鹿はお前もだろ、馬鹿絢」
頭上から声。見上げると走ってきたのか軽く乱れた息を整えているハチがいた。なんで此処に。口を開くのを阻むかのようにハチに手を引かれ無理矢理立たされる。私の顔を見て何か納得したように頷いたハチはそのまま何事もなかったように歩きだし私はぐいぐい引っ張られる。
「ちょっ…と、ハチ!」
「朝飯遅れるぞ。食いそびれるのは勘弁だかんな」
大きな手に包まれた右手があつい。違う、右手だけじゃない。きっと頭も頬もあつい。こうやって意識しちゃう辺りが、なんだか悔しい。私だけが好きみたいで。手を引かれながらハチの大きな背中をぼんやりと見つめた。
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