いさりん 0619

「だーいせいこう」

頭上から聞こえる綾部くんの声に目を開ける。どうやら今回もまた綾部くんが掘った落とし穴に落下したみたい。…我ながら何でこんなに不運なの、これが保健委員会の宿命なの…。
落とし穴から出ようとしたものの、さっきまでそこにいたはずの綾部くんはもういなくなっていた。きっとまた新しい落とし穴を掘りに行ったんだろうけど。待っておけば落とし穴を埋めに来た薊先輩にでも見つけてもらえるかな。膝を抱え座り込んだ時、再び頭上から声が聞こえた。

「…ん、凛!」
「伊作先輩!」

顔をあげると落とし穴を覗き込む伊作先輩がいた。よかった、伊作先輩に見つけてもらえた。予想より早く落とし穴からお別れできるみたい。

「よかった…。姿が見えないから探したよ」
「保健室に行く途中に落ちちゃいまして…」
「大丈夫、怪我はない?」
「はい、大丈夫です」

ならよかった、一息ついた伊作先輩が身を乗り出して手を伸ばす。落とし穴から抜け出すために引っ張りあげてくれるみたい。伊作先輩の手を掴もうとした、その時。

「あっ、」
「え?」

伊作先輩が一言声を発した直後、身を乗り出す為に片手を付き体重を掛けていた所が音を立てて崩れ出す。それと同時に私の上に降ってくる伊作先輩を体格差的にも受け止められるわけもなく。

「いったた…」
「っ、凛!?」

上に乗り掛かる伊作先輩の全体重を受けたまま地面に逆戻り。急いで身体を起こした伊作先輩に身体を揺さぶられる。痛さより近すぎる伊作先輩との距離にドキドキする。

「ごめん…!僕まで落ちたら助けようとした意味ないよね…」
「大丈夫ですよ、伊作先輩が見つけてくれただけで私は嬉しいですから」
「凛…」

ごめんね、そう言われてぎゅ、と抱き締められた。落とし穴の中だなんて忘れるぐらい伊作先輩の体温が心地よくて、肩口に顔を埋めた。



category:落乱
タグ: いさりん


ALICE+