あやあざ 0619
「…おやまぁ」
落とし穴を埋めに来て一つ目を覗いてみたら落とし穴を掘っていた張本人が落下していた件。
「薊先輩、それ僕の台詞ですよー」
「おっと、ごめんねぇ。大丈夫、綾部くん?」
「大丈夫です、今上がりますね」
小さな掛け声と共に綾部くんが落とし穴から這い出てくる。立ち上がった綾部くんの装束を軽くはたくと、いいですよと阻まれた。
「しかし綾部くんが落とし穴に落ちてるとはねぇ」
「少し考え事をしていたら、まぁ…」
「考え事ぉ?悩みでもあったりするの?」
「悩みといったら…悩みかもしれません、が」
綾部くんは少し僕の方に視線を向けてから俯いてしまった。僕、何かしたのだろうか?顔を覗き込もうとしたら両手をぎゅっ、と包まれる。綾部くんが男の子だって分からされるようなごつごつとしたしっかりした手。
「薊先輩」
「なぁに?」
顔を上げた綾部くんと視線が合う、真剣な目。
「綾部ではなくて、喜八郎って呼んで、ください」
きはちろー、喜八郎。綾部くんの名前。
「…きはちろー?」
「…はい」
「喜八郎でいいのぉ?」
「はい、喜八郎がいいです」
少し頬を赤く染めてやわらかく笑う綾部くん、ではなく喜八郎になんだかこっちが恥ずかしくなってしまったようなそんな気がした。
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