高尾双子 0808

「このままじゃいけねぇと思うんだ」

和成が顔を顰める、和音も同じような表情を浮かべていた。同じ血を分け合って生まれた和成と和音は中学二年生の冬深刻な悩みを抱えていた。幼い頃から何をするにも離れる事もなく一緒だった二人がぶつかる初めての壁、双子と性別。傍にいる事が当たり前だった二人は周りにその思考を否定された、彼等はおかしいと、同じ血が流れているから。

「…和成」
「あんな、和音。俺、和音の事すげぇ好き」
「うん、私も和音の事好きだよ、大好き」

これ以上に望むものなんて何一つ無いのに皮肉なものだ。


翌日、異様な光景に教室内は騒ついていた。和成と和音が距離を置いている、二人が一緒にいない事はたちまち知れ渡った。それ見よがしに興味本位で寄ってきた者も多々いたが二人はそれを受け入れた。
一度距離を置いてみよう、それが彼等が出した答えだった。
周囲からの人気もそこそこ高かった二人には直ぐに隣に違う人が立つようになった、その人と一緒に帰る等日々を過ごした、お互い顔を見合わせる事も家ですら少なくなっていた。これでいい双子の相方に依存しなくても生きていけるんだ、少なからずともそう思える確信が心の何処かにはあった。


違和感が起こるのは間も無くしてからの事、耐えられなくなったのだ。隣に和音が、和成がいない日常に。何よりも怖かった、この人は何を考えてる?顔を見ても分からない不安感に押しつぶされそうになった和音は丁重にお付き合いを断念した。結局また和成に縋ろうとしている自分が情けなくて和成に怒られるかも知れない、でももう無理だった。和成が隣にいないことが怖くて怖くて耐え切れない。

「和成、ごめん。無理だった」

縋るように彼の背中に項垂れる、背中に顔を埋めると彼の温もりに酷く安堵している自分がいた。

「俺も、和音じゃねぇと無理」

振り返った和成の顔が歪んだ、結局離れられない似た者同士でしかない。

「馬鹿だね、私達」
「本当にな」
「和成がいい」
「うん」
「双子以上じゃなくていい、和成がいてくれたらいい」
「うん」

ぽつりぽつり、零れ落ちる和音の本音を和成は小さく頷き答える。好きと自覚したのは離れてから、家族ではなくて一人の人として和音は和成が好きで和成は和音が好き。
これが高尾双子の愛の形。



category:黒子
タグ: かずかず


ALICE+