ヒロかな 0513
負けた、私達のサッカーが。
がくりと地面に膝をつく、お父様のために戦って勝つ、この想いがあったから今までどんな辛い特訓も耐えてこれた。
「私達が負けたら…居場所は…」
なくなってしまう、目的も、何もかも。
「奏」
名前を呼ばれて俯いていた顔をあげる、グランがそこに立っていた。
エイリア名のリータじゃなくて、奏と呼ばれた事に気が付く。
「グラン…」
私と目線を合わせるようにかがんだグランに抱き締められる、久しぶりに優しいグランをみた気がする。
違う、勝つことだけが使命だと思っていた私がグランに対して冷たく当たってきただけだ。
「奏、大丈夫」
もう終わったんだよ、と私の肩口に顔をうめたグランが呟く。
「グラン、私は」
「グランじゃない、俺はヒロト」
「…ヒロト、私これからどうしたら。居場所がわからない」
「奏の居場所はここにある、俺のもとにね」
ぽんぽん、と優しく背中をヒロトが叩く、それが暖かくて、私の涙となった。
「ヒロ…っト、」
ヒロトの背中に腕を回し、ぎゅっと縋るように抱き付く、それに答えるようにヒロトの抱き締める力も強くなった。
いつも迷惑かけてごめん。
ヒロトはいつも私の傍にいてくれたのに、私は気付けなくて。
「奏は俺が守るから」
その言葉に私はただ頷くしか出来なかった。
何を求める涙なのか(君は俺の傍にいて)
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