風蓮 0513
両親の墓の前で立ち尽くす蓮。
雨が降っているというのにそんなことも気に掛けない、いや気にする余地がないといった方が正しいのかもしれない。
当たり前だ、蓮の両親はいないのだから、あの日の事故で、もう。
「蓮」
これ以上蓮が濡れないように蓮を傘に入れる。
「かぜ、まる…」
俺を見た蓮は泣いてはいなかった。
「ねぇ、風丸。あたしのお父さんとお母さん、元気かな」
「元気だと俺は思うよ」
「そっか、どこも痛くないかな…」
「……蓮」
「あたし、もうわからなくって……、なんで」
「っ、蓮!」
傘を手放し悲痛な声をあげる蓮を抱き締めた、雨で冷たくなった蓮と俺の体温が溶け合う。
「あたし、一人になっちゃったよ…」
「蓮は一人じゃない」
「でも」
「蓮のお父さんとお母さんの代わりになるのは俺には出来ない、だけど俺が傍にいる。これからもずっと」
小刻みに震える身体を強く抱き締める、蓮を一人にはさせない、俺が傍にいるから。
涙雨(君の辛さを俺にわけて)
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