風蓮 0513
紙袋を抱えたまま廊下を右往左往する樋浦蓮は一年生の教室を覗きに行くべきか行かないべきか悩んでいた
幼馴染である風丸一郎太の妹、風丸一花の事が気になっているのである。
一花の想い人が風丸の後輩にあたる宮坂了である事は知っているし、今日のバレンタインの為に一緒にチョコを作った蓮だからこそ一花が宮坂にチョコを渡せたのかどうか心配なのだ。
「…一花ちゃん、大丈夫かなー」
「一花がどうかしたのか?」
声を掛けられた方を振り向くとそこには不思議そうな表情を浮かべた一花の兄である風丸一郎太がいた。
「あ、風丸!」
「何か困っていたみたいだけど、蓮?」
「うん…、一花ちゃんが宮坂ちゃんにチョコ渡せたかなって」
「あぁ、それなら」
きっと大丈夫だろ、と風丸は笑みを浮かべた、今度は蓮が風丸に対して首を傾げる。
「どうして?」
「今朝、部活前に河川敷でさ宮坂に呼ばれたんだよ。そこで相談を受けた、って事」
「え、そうなんだ」
今日の登校は一緒に行けないって言ったのはこの事だったのか、と納得した蓮は一息をついた。
「それならよかったよー…、ありがとう風丸!」
「俺は対した事なんてしてないよ、宮坂にも一花にも幸せになってほしいからさ」
優しく笑う風丸につられて蓮も笑い返した。
「はい、風丸!」
蓮は抱えていた紙袋を風丸に差し出した、それを受け取る前に風丸も後ろから紙袋を出し差し出す。
「俺からも蓮に」
「え、いいの?」
「もちろん」
お互いの紙袋を受け取ると二人して照れ恥ずかしそうに笑い合う。
「帰ってから一緒に食べる?」
「いいなそれ、一緒に食べようか!」
Happy Valentine's Day((あ、チョコケーキ))
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