てるひよと湊 0513
(高校生パロ)
自分の席に座りいそいそと紙袋の中から何かを取り出そうとしている柚月ひよりの首元に腕を回し、背後から抱き締めるような形で亜風炉照美があらわれた。
「ひより!」
「あ、てるみ!」
突然背後から照美が抱きついてきたにも関わらず動揺していない辺りでこの光景が日常茶飯事という事がわかる。
現に照美とひよりもはや校内公認の恋人同士という事もあり、教室の中だというのに周りの生徒は微笑ましい笑みを浮かべて二人を見つめている。
「てるみにチョコ渡しにいこうと思ったのだけど、てるみの方が早く来ちゃったね」
「早くひよりに会いたくって」
「そう言われると何だか恥ずかしいね…」
照美に視線をやりくすくす笑みを零しながらひよりは紙袋から一つの丁寧にラッピングされた可愛らしい箱を取り出した。
「はい、てるみ」
「ありがとう、ひより…!」
背後からひよりを抱き締めていた手を解くと差し出された箱を大事そうに受けとりひよりに向かって笑いかけた。
扉の方から自分達を見つめてくる視線を感じ取った照美はそちらに視線をやり、一見誰もいないと思われる廊下側に向かって口を開いた。
「何そんな所から見てるんですか、湊義兄さん」
照美の一声に驚いたのはひよりだけではなく、クラスにいた生徒まで扉を見た。
「湊兄様とお呼びっ!」
照美の一声に反発するかのように颯爽と廊下から柚月湊が登場した。
照美とひよりの恋人同士が校内公認であると同時に柚月湊が妹のひよりが大好きなシスコンである事も校内公認となっている。
「ちっ、気付かれたか…!」
「お兄ちゃん!」
「湊義兄さんがいるこては何となく予想出来てましたよ」
照美は一つ溜息を零す、湊はつかつかと教室に入り込み照美の腕をとった。
「ちょっと話があるから来てもらおうか!」
「僕、ひよりと一緒にいたいのですけど」
「あの、お兄ちゃん…!」
兄が照美に何かをするのではないかと思ったのか戸惑いの表情を浮かべたひよりに湊はにっこりと笑いかけた。
「大丈夫だよ、ひより。ちょっと照美を借りるだけだから」
「仕方ないなぁ…、ひより少し行ってくるね」
湊に掴まれていない方の手でひよりの額の髪を掻き分け額に口付けを一つ落とした。
その直後湊による絶叫が教室内に響き渡ったのは安易に想像できる事だった。
Happy Valentine's Day(たまには義兄さんにも見せ付けないと、ね?)
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