みやいち 0513

「どうしよう…」

可愛らしくラッピングされた箱を抱えたまま、風丸一花は迷っていた。
バレンタイン、想い人である宮坂了にチョコを渡したいと幼馴染の蓮に相談し、一緒に作り上げたものだった。

「了くんに渡したい…けど…」

教室に宮坂がいるのはわかっている、けどあと一歩が踏み出せない。

「いっちかー!どうしたの?」
「ひゃっ!!」

突然背後から背中を叩かれ驚きの余り声をあげた。

「あ、梓ちゃん…!」
「はいはーい!新宮梓、参上!ん?一花、その手に持っているのは…」

一花が持っているチョコを食い入るように見つめた新宮梓は楽しそうな笑みを浮かべ教室に入っていった。

「梓ちゃん?」

慌てて梓を追い掛けようとする一花と、梓に背中を押されながら扉の所まで連れられてきた宮坂が丁度出会う形となった。

「なんだよ新宮」
「いいからいいからー」
「あ、了くん…!」
「え、一花…!」

二人して同じような反応を見せた一花と宮坂に、梓はうんうんと頷きその場を立ち去った。



その場に残された二人はそれぞれ蓮と風丸から貰ったアドバイスを意識しながら固まっていた、先に口を開いたのは一花の方だった。

「あの、了くん!」
「な、何?」
「これ、その了くんに渡したくて…、迷惑じゃなければ」
「迷惑なんて絶対ないから!」

大きな声を上げた宮坂に一花はポカンとしたような表情を浮かべた。

「俺、一花からチョコ貰えるとか本当嬉しくて…だから」

恥ずかしさからか宮坂は頬を赤く染めながらもしっかりとした表情で一花を見つめ手を差し出す。

「俺に、ください」

予想外の宮坂の行動に一花の頬も真っ赤に染まる、差し出された両手に恐る恐る自分が持っていた箱を置いた。受け取った宮坂は嬉しそうに箱を見つめた。

「ありがとう、一花」
「そ、そんな!私だって…その、了くん受け取ってくれてありがとう」


微笑ましいような、二人の光景をこっそりと覗き見ていた風丸と蓮は安心したような笑みを浮かべた。



Happy Valentine's Day
(一花も宮坂もよかったな)(二人ともお似合いだね)



category:稲妻
タグ: みやいち


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