髪が短くなった事で身も心も軽い。思い立ったが吉日、鏡と睨めっこして切った髪だが燭台切に整えて貰えるとは思ってもいなかった、今のウチはとても気分が良い上機嫌。疎が露骨にわかる表情を浮かべておったが気にもせん。今日も今日とて彼の本丸に足を運ぶ、少し間が空いてしまったからこそ楽しみは尽きない。何、仕事である。決して燭台切に会うのが目的という訳ではない。それは姿を見たら駆け寄ってしまうのは仕方がない事。
「燭台切!」
「今日は何の用事?」
溜息混じりのご挨拶もう慣れっこ。相変わらず様になる立ち姿、これでいて料理も出来るなんて素晴らしい、余り食べさせて貰った事はない気はするがそれでもウチの胃袋を鷲掴み。
「監視じゃ監視。まぁ燭台切が任務を放棄してるとは思えんがのう!」
「建前でしょ?」
「そ、そんな事はないんじゃぞ?」
「まぁ、主の邪魔しないなら僕はいいけどね」
相変わらず口から出るのは主の事ばかり、彼女の元に仕えてるとは言えここまで連呼されると流石にやきもち焼き。こんなにも想っている気持ちは燭台切にちっとも伝わらんからつまらん。軽く口を尖らせると女の子がそんな顔しない、と額を突かれた。
「茜、髪結ってたのは持ってないのかい?」
「ん?あぁ、あのリボンじゃな。今は必要ないが一応持っておるぞ」
袖を引っ張り曝け出した腕に巻かれた赤いリボン、人の姿を得た頃から肌身離さずにつけていたものだから今更外すと何だか物寂しい気がして結局手放せずにこれである。
「それ、ちょっといいかな」
「何に使うんじゃ?」
スルスルと解けたリボンは燭台切の手に渡る。使い用途などないと思うが、と首を軽く傾げると頬に流れた髪に燭台切の手が触れると思わず心臓が高鳴る。
「…うん、こんなものかな」
ドキドキしている間に手元にあったリボンは見事に茜の髪に編み込まれ髪飾りになっていた。
「おぉ…!?なんじゃこれは!凄いのう!」
「物足りないと思ってたから」
「燭台切、ありがとうなんじゃ!」
「いいよ、大した事じゃないし」
君には赤が似合うから。主に向けられたとものではない赤に、そう呟いた言葉は喜ぶ茜の耳には届かず風の中に溶け落ちた。
