はじまりの綺羅星


偶々夏也くんと帰り道が同じになった。まぁ、会場に来て夏也くんを応援をして、その後会いに行って…、からの流れではあるのだが。こんなチャンス滅多にない。今言っておかなければ、また夏也は海外に行ってしまうかも知れないんだと思うと、立ち止まってはいられなかった。下を向く視線が、隣を歩く夏也の歩幅がいつもより狭い事に気付くと、些細な事ですら嬉しくて思わず笑みが浮かぶ。そういうところがズルいなぁ、と。同い年なのに夏也くんのほうがずっと大人になってしまったみたいだ。
「あのさ、夏也くん。ちょっと話があるんだけど」
「ん?どうかしたか?」
歩みを止めると少し遅れて夏也の脚も止まる。一度、大きく息を吸う。まだ地面を捉えていた視線をゆっくりと上げると、疑問を浮かべている夏也の表情。真っ直ぐに見つめられると、伝えようとしている言葉すら飛んでいってしまいそうなぐらいクラクラしてしまい、ぎゅっと目を瞑る。
「なっ、夏也くんの事が、好きです」
言った、言ってしまった。中学の頃から続く片想いを、この気持ちを漸く打ち明けられた。断られるかも知らない、もしかしたらもう彼女がいるのかもしれないけど、それでも言ったのだ。
夏也からの返事はない、やっぱり駄目だったんだろうか。瞑っていた瞳を恐る恐る開く。目の前の夏也はこれでもかと言う程分かりやすく頬を赤く染めていた。
「…りく、マジか」
「…大マジだけど」
この夏也の反応は今まで見た事は無かった、想像より数倍ウブな反応が返ってきたお陰で、逆に頭が冷静になってきた。手で口元を覆うように隠し、視線を逸らした夏也の耳まで真っ赤な事な気が付く。
「んな風に思われてるなんて今まで考えた事すら無かった」
「それは友達として?」
「…友達以上に、俺も好きだ」
好きだ、と。確かにそうハッキリとした言葉が耳に届く。夢じゃない、緊張が解けて思わず体の力が抜けてへなへなと座り込みそうになるところを、慌てた夏也の手がりくの腕を掴む。
「嬉し過ぎて、立てないかも」
「おぶってやろうか?」
「それもいいなぁ」
冗談半分でそう言うと、目の前でしゃがむ夏也の大きな背中。本当に甘えてしまってもいいのかな、遠慮してしまいそうな気持ちは一度何処かへ追いやって、寄り添うようにその肩に手を回した。
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