ボクとキミの具体例


こちらからほぼ一方的に連絡は取り合っていたというものの、直接会ったのは中学生の頃。別れは告げたが、留学からの転校続きで地元を離れてしまい、会う機会すらなかった幼馴染。当時より背丈は伸びているとはいえ、纏う雰囲気は変わる事なく。紛れも無いりく自身だと、一目見ただけでも忘れるはずは無い。偶然にも同じ大学で出会えるとは思ってもいなかった。
「元気にしてた?」
伸ばされる白い腕が郁弥の頬に触れる。ひんやりとした掌の体温が、頬の熱をじんわりと奪い取って行く。その感触すら懐かしくもあり、心地良い。声を掛けた時の驚いた様な表情は、既に柔らかな笑みへと変化していた。
「りくこそ、元気そうでよかった」
思わず口元に笑みが浮かぶ。それ程まで再会に安堵している自分に気付く。頬に添えられた手に自分の手を重ねると、女の子だと実感する小さく細い指はすっぽりと覆い被さってしまう。

中庭とは言え、人通りもあり、滞在している人もちらほらいる現状。久々の再会に当時と変わらないスキンシップを取ってしまったとは言え、りくと共にいる姿は側から見ればどう映っているのだろうか、と頭の片隅で思い描いた。
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