オーロラソーダ


元々行動的な人だとは思っていたけれど、輪をかけてそうなっていると思ってしまう。海外留学からの帰国で久しぶりに再会した彼は、また気が付けば海外に飛んでいたらしく、その事実すら同級生の尚を通じて知らされた。
「日本にいる方が稀なんじゃない?」
パスタを突きながらりくは問い掛け、視線を投げる。肉を口に含む夏也は流石にお酒は頼まなかった模様。飲むクセにすぐに寝る現場には何度も遭遇した事がある身としては、此処で寝落ちされると連れて帰れる自信がなかったので一安心である。
「俺にも色々と事情があるんだよ」
「ふうん」
そういうもの?と疑問が過ぎる。
思えば、夏也の事はそこまで詳しいわけではなかった。中学以降の付き合いとは言え、親しい事には変わりはないが、尚程彼の事情を知っているわけではない。それでもこうやって、帰国した彼とファミレスで食事を共にする程度の仲ではある。夏也も尚も親身な人だからこそ、未だに距離感を掴むのが難しい。我ながら贅沢な悩みだと思う。
「また見せてよ、夏也くんが泳ぐところ」
水泳は人並みぐらいしか出来ないけど、彼の泳ぎに魅了されたのだ。折角、夏也が日本に滞在している機会、少しぐらい我儘を言っても許されたい、なんて図々しいだろうか。
その思いとは裏腹に、眩しいぐらいにとびっきりの笑顔が彼の返事だった。
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