世界に二人
ぶくぶくと泡を立てる、視覚が、聴覚が、全てを覆い尽くす。はじめて目を開けた時に見た景色と似ていて、どこか懐かしいような気がする。冷たいと思う、ごめん。そう、目の前の彼は告げた。透明な世界が深い青へと変わる中、冷たさは何も感じない。元々触覚なんてものは得ていない身なので彼の告げた意味がわからなかった。きっと、彼は冷たいんだろう、寒いんだろう。落ちる前にしっかりと、離れないようにと抱き締められていた腕は力弱く、私が抱き締めておかないと彼が何処か離れていってしまいそうで、細腰に腕を回して繋ぎ止める。お揃いと、結って貰った三つ編みはもうとっくに解けてしまって、赤と銀が水の中で混ざり合う。
長い睫毛の下、伏せられた瞳はもう随分と開かれていない、似たような色を持つ黄金の瞳を見ることはもう出来ないのかと。自信満々な表情を見せる中、寂しそうに眉を下げては穏やかに笑う笑顔が好きだった、そう、好きだったんだ。
ぼんやりと意識が薄れていく、眠った事はなかったのに、瞼が重くなる。眠たい、このままと瞳を閉じれば眠れる気がする。段々と狭くなっていく視界の中、彼の赤髪が洋墨にも似た黒い泡に覆われていくのが見えた。