目蓋のキスをご所望で

膝上に座るりくの細い腕が、作之助の腰へとするり、と回される。か弱い力に抱き寄せられ、そのまま縋るように作之助の胸元に頬を寄せる行為に、この距離感に慣れてしまったとはいえ、意識をするなと言われる方が難しいような状況に視線を泳がせる。彼女は時々、この様に腰に抱き付いてくる。それが、何かを確認する為に行っているのか作之助には心当たりがあるので、何も言えずにいた。
「細い、ちゃんと食べてる?」
「食べとるで、お司書はんこそ食べとる?シュークリームばっかりはあかんよ?」
「…私は作之助と違って食べなくても大丈夫だから」
「あっ、今逃げたやろ」
ぷい、と顔を逸らされたと思うと、再び胸元に擦り寄ってくる頭。まだまだ離してくれる気はない様で、腰に回された腕は固く結ばれている。額をくっつけたまま、ぴたりと動くのをやめたりくに、どうしたものか。手持ちぶたさになってしまったので読みかけの本を掴む。ぱらぱらと頁を捲るが、どうも文字が入ってこない。
小さく吐かれる暖かい息が肌に触れる度、彼女が生きていることを実感する。人形など言わせない、生きている人間だと。
「晩御飯は山盛りのカレーが食べたいわぁ」
「私は甘口がいい」
「今日はお司書はんも山盛りにするかー?」
「山盛り食べるよ」
「ほんまに?」
「作之助が食べるなら食べる」
暫く続いた沈黙を破り、やっと拝めた金色の瞳がふわり、優しく微笑んだ。

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