金平糖の涙
「ボタン掛け間違えてるよ」細く、白い手首が伸び、行き場を無くしたボタンを正しく止め直す。手首から上に上にと視線を辿ると透き通るような肌に相反する赤。未だ首元に薄っすらと残る手の痕は彼女から飛び立たない赤い蝶にも見える。
愛しい彼女に口付けを落とし、触れて、繋がって、吐き出して。行為の全てが幸せで満たされている筈だった。本当にどうしたものか、無意識。気が付けばりくの腰に添えていた両の手は甘美な音を震わせる喉元へと伸びていた。
大丈夫、死なないよ。薄っすらと浮かべられた笑みからはっきりと告げられた言葉に安堵を覚え、添えた手にゆっくりと、確かに力を込めた。
りくは本当に死ぬ事はなかった。あの言葉がもしも嘘なら今頃此処にいる事は出来なかっただろうに、彼女の死は俺一人なんかが死んで償えるものではない。ただ、ごめんね、と零された一言が。彼女にそんな言葉を呟かせた自分に自己嫌悪をし、苛立ちを覚える。死にたい。
「死んじゃだめ」
びくり、と思わず肩が震える。まるで見透かされたような、真っ直ぐな瞳を正面から受け止める事が出来ず、揺らぐ視線は泳ぐ。
「だめだよ、治」
念押されるかのようにもう一度発せられた声は優しく、心に染み渡る。嗚呼、何て情け無い。じんわりと涙が浮かびそうになるのを堪え、小さな身体を抱き寄せた。