手を、手を、

日も陰る冬空の下、寒いと零しながらマフラーに顔を埋める鈴音にちらりと視線を向ける。息を吐き、両手を擦りあわせ温めようとする仕草。コートの袖口から覗く手が妙に冷たそうに見えて、無意識にポケットから伸ばした右手は鈴音の手を取る。案の定、ひんやりと冷えた手は至の熱を奪う。次第にじんわりと溶け合う様に広がる熱が、同じ体温を共有していく。そっと指を絡める、俗に言う恋人繋ぎとやらを周囲に人影は少ないとはいえ、至自身からしてしまっている事が不思議でたまらない。唐突な行為に頬を赤く染め上げ、口をパクパクさせながら視線をこちらに向ける鈴音の姿がまた可愛く写り、思わず笑みが零れた。何て小さくて、柔らかい手だこと。普段、コントローラーを握ったりスマホを弄る手が、こんなにも自分と違う物だとは。軽く力を込めると耳まで赤く染めながらも小さく握り返されたその行為すら愛おしい。寒空の下、わざわざ部屋を出て外出すると言う事も、鈴音がいればそれはそれでいいかな、と思う心境の変化に、彼女の存在の大きさを感じた。
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